Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2021年03月号)
本質的力を鍛える
初の共通テストが実施された。この塾だより巻頭言の締め切り時期の関係で、先月号には間に合わず時期を逸した感はあるが、少々雑感。
どうしても新形式の出題「傾向」が目を引く。図表が入り混じる「非連続型テキスト」や、太郎・花子が登場する「会話型問題」など。これらを知識・技能を使って読み解いた上で、思考力・判断力・表現力を使って解答に辿り着く、というのが、今回取り入れられた理念だ。センター試験までは、知識・技能だけで解く問題だったことを「反省」し、新学習指導要領とともに方向転換した(表現力は記述式導入が見送られ今回は直接的には問われてはいない)。「試行テスト」に比べ、初年度で手加減気味に留まった今回だけでの即断は危険だが、理念と実際の差を感じる。
科目別解説は専門家の東進の先生方に譲る(東進生は同日テスト解説動画として全て視聴できます)が、数学を解いて感じたのは、はたしてこれは「数学力」をみる問題なのかという点だ。統計分野の増加は理数系出身からすると、これは数学? という気持ちになるが、昨今の世の中の数理的理解力不足の場面をみると、社会的要請もやむを得ない。しかしそれ以外にも、カンや試験テクニックで正解できる問題もあり、本質的な力を問う点ではセンター試験の方が、歯応えがあった気がする。他科目でも、判断力は必要だが、その教科の力をみているのではない部分も目立つ。
もちろん、現代の大学への多様化したニーズが背景にあり、旧来型がよいとも言い切れない。確かに、従来の教科の試験では測れなかった、教科の力以前の判断力または論理的思考力(いわゆる地頭)の基本的な力をみることも必要であろう。判断の分かれるところ。ただこれ以上、瞬発的判断力の競争に行き過ぎないことを祈る。
それでも、大学で最も深くまで学ぶ生徒たちは、高校までの教科自体の本質的な力をきちんと鍛えることが重要だと考える。だからもっと数学力を問うてほしい。東進の先生の、対策の前に、数学の力を鍛えましょうとの声に、少し力を強くした。
※この内容は2021/03塾だよりに掲載したものです。
この記事を書いてからすでに2か月近く過ぎた。
その後、共通テストの次の改革で、「情報」の追加など科目変更が発表されたり、記述式の出題は断念する方向という話が流れてきたりしている。
また、今年の共通テストの第二日程の数学の問題も解いてみたので、今回の改革の方向性をさらに肌で感じ、なるほどと思った部分も少なくない。ただ、やはり、それでも「数学力」を問う出題としてどうなかと思う部分も残る。
「現実の問題」への応用に拘るために、「数学」的に最後まで解いて、美しく解決しないまま放置する形の出題(レベル的にそこまで要求すると時間内にはとても解けないため)となり、「数学」の問題としてはどうなのか、そこに拘る必要性があるのかという気持ちがぬぐえなかった(ネタは面白いことは面白いが)。
そういう意味では、センター試験は非常に「よくできた」出題だったと、改めてわかる。同じ出題陣のはずだ。今年は初めてで、出題側もどこまで踏み込むのか様子を見た部分で、来年は本領発揮で、なるほどとうなる出題をしてくれることを期待したい。
そして、そういう問題を「楽しんで」解ける生徒たちを育てたい。