Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2025年8月号)
未来への変革
昨日、ある塾長の訪問を受け、昼食を取りながらお話しした。会合などでたまにお会いすることはあったが、訪問は十数年前以来だという。当時は創業間もない頃だったそうで、いろいろとうちの塾のやり方、運営方法などを聞きに来てくれたらしい。何をお話ししたかの記憶はもはやなく、それがヒントになったかも定かではないが、その後発展されて、難関高校への合格実績も高い地域No.1の塾となったとのこと。ご自分たちでさまざまに試行錯誤し研鑽にとりくまれたことだろう。
雑談の中で、昔、ある地域の老舗最大手塾創業者と鍋を囲んで、お話をお聞きしたことを想い出した。創業からうまくいきだすまでのかなり大胆な苦労話が思いのほか興味深かった。その前に、二代目の社長に素晴らしい校舎や本社機能なども見学させていただき刺激を受けていても、記憶に残ったのは夕食での逸話だった。
どちらの塾も、うちの塾と考え方で共通する部分は少なくない。そのようなもの同士が研究し合うことでよりよいものへと進化できるという考え方も一理ある。
しかしながら民間教育の塾・予備校の良いところは、多様な考え方が存在していることと考える。その中からどれを評価し選択するかを決めるのは顧客だ。自分たちの考え方を正しく理解してもらうように発信し、そこからぶれない実践を続けることが長期的に正しい評価を生むはずだ。うまくやっている他所の上辺だけを真似したり実態以上によくみせる宣伝をしたりの短期的利己的な行動は慎むべきこと。
顧客が求める表層は時代とともに変化し続ける。その流れにあっても、私たちが理想と掲げる教育の変わらない本質があるはずだ。その本質を追求するために、見えている形は時代の変革に適合させていく必要がある。自らを主体的に進化させる意志を強く持ってさえいれば、たとえ異質なものであっても気づくことはたくさんある。視野を偏らせることなく、未来への変革のエネルギーとしていきたい。
※この内容は2025/8塾だよりに掲載したものです。
夏期講習の時期が明けて、いろいろな教材会社の方などの訪問を受ける機会が増えた。講習期間、塾の現場は一日中忙しいので、どこも訪問を避けられてしまうため、その間に内側の仕事をしていて、明けると一斉に外回りとなるのだろう。直接的な教材などの提案は、すべて教務の担当たちが受けてくれてそれぞれの教科担当などで研究、検討するので私の出番はほとんどない。代わりに聴くのは、全国的な民間教育業界の動きやトレンドなのだが...。
今回、毎度の話ではあるが、ちょっと気になった点があった。「~生徒募集が悪いので、高校部をやってみようかと」「~都内では流行が来ているので、中学入試を始めてみようか」という塾が多いとのこと。年々、少子化の影響が大きくなってきて業容に響く塾が少なくないので、言いたいことはわかる。「何が ”当たって” いるの?」と聞いてみたくなる気持ちもわかる。
だが、それが”売れる”と聞いたから、流行っているからと、自分たちのノウハウも何もないものを、いきなり短絡的に始めてしまうのはいかがなものだろうか。儲けたいという利己的な発想だけから、とりあえず始め、塾屋さんは口だけは達者が珍しくないので、できもしないことをさも自信ありげに宣伝し、それなりの”お客”を捕まえるかもしれない。サービス業の中で、塾は提供するサービスが低品質のものであっても、他と比較がしにくく、短期で離脱する率が低い業種であろう。”お客”の立場としてみると、結果がでてから、こんなはずでは、と気づいても手遅れになる。
もっとも、どこでも、新しいことを始めるスタートのときは、何もないところからの出発ではあることは違わない。異なる点があるとすれば、終始、利己的な考え方なのか、”お客様”のために、絶え間ない向上を目指すという利他的な考え方を大切にしているか、だけかもしれない。
ここで他者を批判して、「ムっとした」気持ちを垂れ流していても何の意味がない。
自分たちを省みて、襟を正すところは向かい合い、さらなる高みを目指し、負けないように頑張っていこう。