Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2012年10月号)
凡事徹底!!
鍵山秀三郎さんのご講演を聞く機会を得た。たった1台の自転車に荷物を載せての行商から事業を始め、イエローハットを創業、東証一部企業までにした方だ。創業以来続けている掃除運動は有名で、各地にも広がっている。
当たり前の誰にでもできるような平凡な一つのことを、誰も真似できないくらい徹底的にやり続けて、非凡になるまで努める。凡事徹底という言葉を世に広めた方でもある。
実は開会前の会場へのエレベーターで遭遇した。ちょうど出会った間合いで、さっと順を譲られてしまったのだが、その仕草に驕らない境地を感じた。一つの道で成し遂げられた方独特の「やっぱり」と感じるものだった。
勉学の道も、結局は凡事徹底に行き着くしかない。成績を上げる楽で簡単で、画期的な方法はないかと、聞きたがる勉強法マニアの生徒もよく見かける。しかし、結局、一つ一つを、本質的な意味でわかるまで納得するまで解決していくしか道はない。もちろん、方法や手順による成果の差も小さくはない。それでもやり続けなければ、何も生み出さない。
鍵山さんは講演の最後に、やらない人の共通点は「そのうち」「まとめて」「一気にやろう」だと看破されていた。今すぐ少しだけでも行動を起こそう。
※この内容は2012/10塾だよりに掲載したものです。
鍵山さんにお会いできたことはよく記憶している。
習慣的に、一番前の席を狙っていた。しっかり聴くためでももあるが、講演の効果は聞く側の姿勢にあり、と考えているので、始まる前に気合が入った状態にスイッチするためでもある。
数十名程度参加の小規模な講演会だったはずだ。それほど早くいく必要はないが、会場や受付の下見(笑)などを兼ねて、開場時間より少し前にエレベータに乗ろうとボタンを押しドアが開いた瞬間に、後方からいらっしゃった。そのときはお顔を記憶してはいなかったので、とても小柄のご老人に見えた。年配者に先を譲ろうと、どうぞとお声をおかけしたら、逆にどうぞお先にと手を差し出しながら譲られた。柔和な表情でありながら、背筋をピンと伸ばした姿勢と迫力に、ありがとうございますと思わず先に乗ってしまった。小柄なお身体が、もし力で押しても簡単には動きそうもないような不動のものに感じた。
その方が鍵山さんだった。
講演は、上記の通り、何もないところから、一人で自転車1台に積んだ道具を町の修理工場に行商して商売を始めた話に「これが本当の自転車創業です」と笑いを取られて始まり、有名な「トイレ掃除」で始まる凡事徹底のエピソードと考え方のをお話いただいた。
謙虚の大切さも説かれ、「人に譲れるものは、全部譲る」とおっしゃった。さきほどの出会いの瞬間がなるほどと腑に落ちた。
「凡事徹底」は、知っていても忘れがちになる。わかっているかより実践が大切。
最後の、やらない人の共通点の一節はすっかり忘れていた。改めて、今すぐ少しずつやる大切さを忘れないように生きよう。