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[巻頭言2024/12より] 持ち帰ったもの

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2024年12月号)

持ち帰ったもの

 10月の終わりに「全国模擬授業大会in名古屋」を見学してきた(blogでも紹介)。

 春と秋に全国の塾の先生たちが授業技術を競い合う大会(今回は公立中学と私立中高の先生たちも一部参加)。授業で行う「導入」部分の授業を実演し、審査員が採点。ブロック予選の勝者がセミファイナルで科目別チャンピオンを競う。さらにそのチャンピオン同士がグランドチャンピオンの冠を競うファイナルがフィナーレ。

 参加する選手を選ぶために、塾内予選をする塾もある真剣勝負。上位入賞の選手たちは大会までに相当のトレーニングを重ねてきていて質の高い内容だった。
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 ただ、うちの塾は対話参加型、生徒たち一人ひとりに、どれだけ自分の頭を使って考えさせるかという観点で授業を構成しているため、あくまでも参考としての見学までに留めている。このような競技形式では、時間制限があるため、どうしてもどれだけ「わかりやすく」組み立てて、短時間で知識を詰め込むかになりがちとなる。プレゼン技術を磨くには素晴らしい大会形式なのだが、このコンテストを勝ち抜くために、型を作り過ぎてしまうと、実践には応用が効かない。

 これは、短期的な成績を追い求め過ぎると、本質的な実力は伸びにくくなることが少なくないことと同型だ。私たちが挑戦しようとしているものは、従来、職人技、個人に依存しているとされていて、研修によって経営品質を高めることは難しい。だからこそ、ずっとスタッフ研修には力を注いできたが、コロナ禍期によって研修の形も変える必要に迫られ、そのときできることの中で全力を尽くしてはきた。

 今回の見学で、今また、それを超える時期に差し掛かっていることを感じた。単に前の状態に戻すのではなく、新たにできるようになったDX化、オンライン技術などを活用し、より高いものを目指す挑戦が可能になろうとしている。まだまだ道半ば。さらなる進化に挑戦していく想いを持ち帰った。頑張ります。
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※この内容は2024/12塾だよりに掲載したものです。
 誤解のないように最初に書いておくが、この大会の意義について否定的な発言を述べているのではない。一定のルールの下に、導入授業の技術を競い合うことは非常に意義深い。職人技の暗黙知とされがちな「伝える」ことを、形式知化して技術として高めることができれば、素晴らしいことだ。
 だが、教えることだけに焦点を絞り込んで特化しまうと、失うものは大きい。どう教えれば、わかり易くなるか、簡単にできるようになり、得点がとれるかに偏りがちだ。いわゆるコスパ、タイパという上辺だけの判断基準に引きずられがちになりやすい。全部教え込んで、それを訓練してしまえばできるようになるだろう、という教える側の傲慢な考えにも結び付きやすい。
 自ら考え、ああそうかとわかる瞬間を大切にしていきたい。ただし、それを単なる職人技としてしまわずに、経営品質として成立させていかなければならないと考えている。正しいやり方で研鑽すれば、確実に磨かれていく「教える技術」の教育。
 私たちは、その意味で「教育」の会社であることを目指していきたい。
 閃く体験が楽しさを生み、それが原動力となるように。

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