Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2023年06月号)
時代の流れの行方
公益社団法人である全国学習塾協会主催のシンポジウムに参加してきた。全国6箇所で開催する会の東京の回。その前日も全国の地域有力塾有志が集まる定例の勉強会に参加し、さまざまな情報交換をしてきた。このあと東進衛星予備校加盟校の全国大会も、今年は元通りの2日間の形で開催予定である。コロナ禍以降、全部停止していたものが、しばらくの徐行期間を挟んで、ここに来て再開した形。
さて、参加したどちらの会でも一番のテーマとなったのが、いわゆるICTやDXなどのIT技術関連。その中でも、最近マスコミ等でも話題の「生成AI」が中心となった。すでに、資本力のある大手では、模試やどのような形で応用できるか、研究から実証実験も進んでいる。その他、学習進捗管理LMSや、AIを活用した学習システムなどさまざまなものが登場したが、使う側の塾・予備校が、どの方向にどの程度進めようと取り組んでいるかがよくわかり有意義だった。
コロナ禍によって、塾予備校ではオンライン技術を利用したものが一気に普及した。時間の流れを短縮したと言える。AI活用による指導も学習アプリだけでなく、東進の志望校別単元ジャンル演習講座もすでに実用化し、実績を上げつつある。AIが人間を追い越すシンギュラリティ問題も間近に迫る部分が少なくないはずだ。
だが、今のところ、少なくともやる気を引き出す部分は、人と人との直接的な接触によるものを超えることは難しい。さらに、そのやる気は、誰か他人から受けとって引き出してもらうという受け身のものよりも、周りが自分を見てやる気が出たと言ってもらえるくらいに、自らやる気を出してやろうという積極的、能動的なやる気が一番強く持続する。塾予備校の役割は、単に問題解法をわかりやすく教えることではない。やる気を高い状態に励起する場としての役割の方が重要であると考える。そのような場を目指すとともに、技術開発ももちろん同時に進めていく。
※この内容は2023/06塾だよりに掲載したものです。
いきなり余談から。
このシンポジウム、パネルディスカッションの登壇者は、協会からあらかじめ各回の地域を考慮して選ばれ、毎回替わる。当然、誰が何を話すかはわからない。とくに東京会場は、初めの時期の開催だったので、進行の予想がつきにくかったらしい。そのため、時間が余ったとき用に、実は、何か話の内容を踏まえて会場が盛り上がる質問をしてほしいと、当日急遽依頼されていた。ここで仕込まれていたとネタバラシしてしまっていいかはわからないが、もう全日程はとっくに終了したのでよいだろう(笑)。
その質問の時間どころか、予定の時間を超過するのを抑えるのがなんとかやっとというほど、本題は盛り上がった。終了後、情報交換のための懇親昼食会がもあったのだが、そこで各々個別の質問や情報交換も時間いっぱいまであちこちで続いた。どうやら用意された軽食も食べる余裕がなく、ほとんど残っていた様子。
やはりDX化の波を実感してのことだろう。
ところで、話は変わるが、県教委から公立高校の入試の採点に関して、大きな変更が発表された。出題方針は変えないが、解答用紙と採点方法を変更をするという。選択問題はマークシート式を採用し、記述問題はデジタル採点システムを採用するとのこと。
幸い、うちの塾では、普段の毎週のテストもデジタル採点システムを利用している。生徒にとっては慣れている方式だ。さらにこの夏期講習の毎日の演習テストもすべてデジタル採点化したところだ。
この春の高校入試での採点ミス、合否判定ミスがきっかけで、思わぬ大きな変革の波が押し寄せることになったが、変革は、準備してあるところには大きな影響を及ぼさない。
先を予測するのは誰にもできないが、予測できない状況の変化に対して、組織的に対応できる力を準備することことできるはずだ。それは、どんな出題傾向の変化が起きても、合格できるように準備する受験生のやり方とまったく同質ものであろう。
「幸運の女神は準備された人のところにしか微笑まない」(細菌学の開祖ルイ・パスツールの言葉Louis Pasteur)