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[巻頭言2023/03より] 両極端を同時に並立する

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2023年03月号)

両極端を同時に並立する

 これを書いている今日は、東進志田晶先生による特別公開授業を開催する。久しぶりの公開授業となるが、実は鎌取駅南口校では初だ。開校当初からたくさんの生徒さんが来てくれたので、拡張を何度かしてきたが常に設備の限界で余地がなかった。新館開校でやっと可能になった。その初開催は、光栄にも数学科のエース志田先生に来ていただく。昨夜、就寝前に少しは問題を見ておこうと思ったのだが、問題が面白くて結局全部解いてしまった。今日の授業の解説が楽しみ。

 共通テストも3回目となった。数学はさすがに昨年より易化とはなったが、方向性は昨年までとは変わらない。いろいろ思うところはあるが、結局一番の違和感は、解いていても面白くないのだと改めて気づいた。もちろん志田先生の題材も最近の入試問題。解の絞り込みなど多少作業性が似ているのだが、この違いはどこにあるのか。それは昨年も触れた方策の誘導にある。共通テストは現実の問題を取り入れようと誘導文が長い。その分、解き方の方策を自力で自由に考える余地が少な過ぎるのだ。数学の面白さの根源は考えることにあるのだろう。

 先日出張の合間に、大学時代の友人の一人に久しぶり会うことができた。学生時代、彼は飛びぬけて優秀で、日本を代表するメーカーで活躍しナンバー3まで行きながら早期退職した。お茶をしながらの雑談の中で、共通テストの話題に触れ、素早く要点を把握する力、判断する速度の勝負になり過ぎて、じっくり粘り強く考えることが軽視されないか心配と話したら、「そういうテストなら俺はもっとできたな」(笑)と言われて、なるほど、その点は私も同じだったと思った。

 どの能力の方が重要ということではなく、どの能力を試されても力を発揮できる人に育てることこそ、教育の本質だろう。それは両極端の力を並立させるような道かもしれない。困難な道ではあるが、そこを目指すつもりである。

※この内容は2023/03塾だよりに掲載したものです。

 2月上旬に、神戸まで久しぶりの長距離出張に行った。コロナ禍が始まって以来なので3年ぶり。関西で大雪で大混乱となった翌日で、新幹線が滋賀県内で大幅に遅れての到着となったが、結構遅い時間まで続く会議なので、後半になんとか間に合った。全国からの同業の会議なので、当然、業界、教育などのテーマでの情報交換が長い時間続く。翌日は、朝から六甲山をくぐり抜けての視察。新しいコンセプトの校舎を見学(新しい発想の部分は、まだマル秘のものが多数だそうなので写真でお見せできないのが残念)。
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 そのあと、帰路の乗り継ぎの合間に件の大学同期と会う予定を入れていた。積雪の残りの渋滞で大幅に時間がずれてしまい、途中で電車移動に切り替えてなんとか間に合った。
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 そんな頭が整理できていないところでの、本編の「そういうテストなら俺はもっとできたな」の話。ズバッと切り込んだ本質をとらえた意見にハッとした。なるほど難関の大学では、当然二次試験がある。じっくり考える力はそちらで見ればよい。その両面を試す方向への改革と考えれば、確かに悪くないかもしれない。少なくとも、知識偏重だった過去の入試に比べれば、良い方向へのひとつの大きな変革であるとはいえる。そして、この改革までがゴールではないはずだ。さらに次の進化をするための、これが一歩目だったと言えるような方向に進んでくれればそれもよいのかもしれない。

 だが、それでも強調しておきたい。この数学の問題は、やっぱりあまり面白くない。問題が面白ければ、受験生も、もっと学びたいという素直な気持ちが生まれるだろうに...
 受験勉強は、厳しく自分を律することが必要だが、それは単なる難行苦行ではないはずだ。厳しいと楽しいは両極端でも並立する答えがあると信じる。なんとか勉強の楽しさを、同時に届けていきたい。

 志田先生の授業は、とても面白かった!
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