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[巻頭言2014/03より] 開花

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2014年03月号)

開花

 新年度、新学期スタートの時。新しい挑戦が始まる。学校では4月からだが、塾では3月から新学期に切り替わり、気分一新の時を迎える。

 新しい学校に進学する生徒たちは当然だが、学年が変わる生徒たちも、いろいろと環境が変わる時期だ。これからの一年でどれだけの成長をしてくれるだろうか。

 さて、脳科学では、最初の印象がその後に大きな影響を占めるということを何度かご紹介した。そしてその第一印象が決まるのは一瞬で、一度抱いた第一印象を変えるには、大きなエネルギーとたくさんの時間が必要なのだと言われている。勉強でも習い事でも、最初に好きを感じたものを自分に取り入れることは、好きではないと思ったものを取り入れることと比較すると格段に簡単にできる。この好きという気持ちは、本当の感情ではなく、思い込むだけでも効果があるのだそうだ。何ごともやる人の気持ちの持ちようである。

 ところが、指導する側の気持ちの持ちようでも結果が変わることが、脳科学の実験で試されている。指導者に、「この集団は優秀者である」「伸びる才能を持っている集団だ」と思い込むように、ランダムにダミーデータを与えて指導させ、追跡調査をすると、明らかに成績の伸びに差が出るそうだ。指導する側の期待や確信が、伸びを引き出す。生まれつきの才能だけではなく、環境が大きな影響を与えるのだ。

 この子は将来大きく伸びる、飛躍するはずだ、と信じて、期待を持ってひとり一人の指導に当たります。ぜひ、皆様も親として、その気持ちを持って子供と接していただきたい。いつか必ず成長して、才能が大きく開花します。

※この内容は2014/03塾だよりに掲載したものです。
 まず懺悔である。「指導する側の気持ちの持ちようでも結果が変わることが、脳科学の実験で試されている」と書いているが、この実験論文の引用元がわからない。引用を、きちんと書いていなかった初歩的な失敗。紹介しようと考えたのだが、できなかった。申し訳ない。
 替わりというわけではないが、それを探す過程の中で、関連はないが、少々興味深い論文を見つけたので、紹介しておく。
 dunning-kruger-recognize-incompetence.pdf (intrpr.info)
 ダニングクルーガー効果(Dunning–Kruger effect)と呼ばれているそうだ。
 「能力の低い人ほど、自分を過大評価し」「能力が低いということを正しく認知することができない認知バイアス」があるという。この研究は1999年に発表され、2000年のイグノーベル賞の心理学賞を受賞している。
 イグノーベル賞というと、古くは「たまごっち」も受賞し、つい、面白いが役にたたない研究や事柄の賞と思ってしまうが、この研究は、その後の広くさらなる研究につながっているそうだ。その論文を読むと、イグノーベル賞のイメージ(個人的な感覚に過ぎないかもしれないが)とは異なり、科学的な実証実験であることがわかる。
 論理学、文法、ユーモアの3つのテストを行い、その能力や得点の自己評価による予想と、実際の点数を比較したところ、多くは実際より高く評価をし、その乖離幅は最下位グループが最も大きかった(つまり非常に過大に評価した)。また最上位集団は、自己評価が低くなったという。また、その原因は、他人の能力や得点を正しく評価推定できないことで、能力が低い人ほど自分ができていないことを正しく認知できていなかった。反対に最上位グループでは、自分ができたことに対して、他人も同じように容易にできると思って、正しく自分の位置を評価できないことから低く評価する(ただし誤差は小さい)傾向があるらしい。さらに、他人の答案 (最下位集団では当然自分よりできがよく、最上位集団なら自分より劣る) を見せて予想評価させたあと、再度自己評価しても修正されなかった。
 ところが、メタ認知の訓練(上記の3つのテストとは直接の関連がないメタ認知訓練)をした後に、再度評価させると、両者ともに改善する傾向が表れた。つまり、認知の側の問題であり、メタ認知のトレーディングで改善できるということがわかったという。
 私たちの仕事は、その結果に対して、だからどうすればよいのか、が課題。この研究は、いろいろと改善のヒントになりうると思う。直接どう活かせばよいかは、もう少し研究してみないとはっきりとは言えないが。
 まずは、これに限らず、常に広くアンテナを張って、感度を上げておきたい。
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