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[巻頭言2013/09より] やっていることを好きになる

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2013年09月号)

やっていることを好きになる

 夏期講習が開けると、いよいよ受験生たちにとっては終盤戦。ここまで蓄えた力を見せるときがやってくる。時間がどんどん迫ってくる。苦手科目からも逃げるわけにはいかない。勉強が「敵」に見えるときもあるかもしれない。

 しかし、勉強は「敵」なのだろうか。

 勉強を、問題と戦って得点を取らなければならない相手だと思うと、確かにそう見えてしまうだろう。だが、本当の「敵」は自分自身の中にあるはずだ。わかっていてもつい怠けてしまう気持ち、苦手だと嫌だと逃げたくなる感情、解決への行動を起こさずに、現状維持で先送りしてしまう弱い心。自分にとって、マイナスの「結果」を引き起こしている真の「原因」は、すべて自分自身の中にある。

 勉強は、その自分自身を外へと伸ばす大切な方法なのだ。やり続けることで、自分自身を磨くことができる。将来、大きな力を生み出すのは、取った点数やどこに合格したかという受験の結果ではなく、その結果を創り出した自分自身だ。その自分自身の力は、努力して自らを磨き成長することでしか伸ばすことができない。勉強は、そのための一番優れた方法、すなわち「味方」なのだ。

 けっして、勉強を「敵」ととらえてはならない。大切なのは、今与えられた全てのことを、自分に与えられたチャンスと思いやり続けること。そして、好きになるまでとことんやり続けること。最後に「勉強」が自分の「味方」をしてくれるようになるまでやり抜くこと。そのために、好きなことをやるのではなく、今、やっていることをまず好きになろう。道はそこから拓ける。

 受験生は終盤戦。保護者の皆様、体調管理をよろしくお願いします。

※この内容は2013/09塾だよりに掲載したものです。
 すべての「原因」を自分の中に求めて、それに向かい合い、自らのマイナスを変えていくことで「結果」をプラスに変えていく。勉強だけに限らず、すべての人生において言えることだ。
 「言い訳をしない」「愚痴や不平不満を言わない」「悪口や人のことを言わない」は、子供に、躾として言う代表的な言葉の例であろう。強く叱って、命令することとも少なくないだろう。子供はいやいや従うが、そのうち反抗期を迎え、親の言うことを素直に聴かなくなる。いやだと思いながらやらされていることは結局は身につきにくい。
 ときには叱ることも必要かもしれないが、その前に、なぜ言い訳や愚痴、不平不満、悪口はダメなのかを、大人は子供にきちんと説明しているだろうか。
 それらは、すべて「原因」を人のせいにすることと同値だ。「他責」にしてしまうと、潜在的に自分は正しいから変えなくてよいという考えを強くすることになる。
 「自責」と考え、自分の悪いところに向かい合うことは、自己防衛反応が邪魔をして難しい。だが、その嫌な気持ちを乗り越えなければ、自己変革は生まれない。
 日本の若者は、自己肯定感が不足している、若者の無気力はそれが原因だ、と言われることがある。しかし、安易に、現状の自分をただ肯定することが、本来の「自己肯定感」ではないはずだ。努力すれば、もっとよくなると考える「自己有用感」からの「自己肯定感」の方が大切なのではないだろうか。
 将来「好きなことをやる」ではなく、今「やっていることを好きになる」ことは考え方次第ですぐに変えることができる。
 そして、「やっていることを好きだ」と感じさせることは、教育の力で可能なはずだ。それが教育の第一歩であろう。