Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2014年10月号)
原動力は好奇心
幕張メッセで開催されていた宇宙博を見た。子どもの頃からの年季入りの宇宙好きとしては物足りなさもあったが、普通の人が余り注目しないようなものでも、「ああこれ」がと好奇心を満足させられるものがたくさんあり、楽しい半日を過ごした。
理系、とくに工学的なモノにいつから興味を持つようになったのかは、自分でははっきり記憶がない。特別な体験がきっかけになったわけではないようだ。おそらく、遊んだおもちゃ、読んだ本、テレビなど様々な周りの環境と経験が積み重なって、そういう指向性を作ってきたのだろう。前に紹介した同級生の東大教授Fくんと前に二人で飲んだ席で、彼が化学に興味を持ったきっかけについて聞いたことがある。小学生の頃、父親に化学実験器具を買ってもらったのだそうだ。それがうれしくてずっと遊んでいたらしい。その当時はわからなかったが、その連れて行ってもらった店は、大学の研究室が購入するような専門店だったのだそうだ。
子供の頃の影響は大きい。ただし、親がよかれと思っても、あれしろ、これしろと、勉強と役に立つものを押しつけてしまっては、うまくいかない。役に立たないようなことも含めて、たくさん興味をもって、自ら経験したことが、のちに活きてくる。勉強だけで、純粋培養して育てすぎるのはあまりよろしくないようだ。
さすがに受験生は、いよいよ追い込みのシーズン。直接成果につながらない脱線をしている暇はないが、受験生以外は、ぜひさまざまな知的な体験をさせていただきたい。今のうちなら、一見挫折にみえることでさえ、次の成長の糧になる。
土台がなければ、高いゴールを目指せない。太い根を、大きく広げるような知的な好奇心を育てる機会や環境を、親も意識してみよう。
※この内容は2014/10塾だよりに掲載したものです。
この宇宙博に行ったときのことを懐かしく思い出した。宇宙は、子供の頃の記憶の中では、魅力的な希望に満たされていた。
小学校の図書館で、一時、毎週末、冊数の上限まで本を借りて帰っていた。これが読みたいという本を、ではなく、あまり選ばずに決めていた気がする。だから、ほとんどは、読み始めで面白くないとそのまま読まずに返していた。あるとき偉人伝のようなシリーズを端から順番に借りていた中で出会い、興奮したのがフォンブラウン博士の伝記。だから、この宇宙博で一番感激したのは、フォン・ブラウン博士愛用のテンガロンハット。マニアック(笑)。
その帽子を、フォン・ブラウン博士の、子供の頃からの夢、宇宙旅行を、ナチスドイツ時代のミサイルV2号の開発から、アメリカ亡命、不遇時代を経てのNASAでのアポロ計画で、実現に至るまでに思いを馳せ、見入った。
今、コロナ禍で、子供たちがさまざまな体験ができるチャンスが減っている。子供たち一人ひとりに、どんな分野でどんな活躍をする未来が待ち受けているかは、大人が決めるものではない。子供の純粋な好奇心が原動力となるはずだ。
そんな心を育てていきたいと強く思う。
※この宇宙博は撮影可能でうれしかった。