Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2022年12月号)
創造性を引き出すには
ちょうど読んでいる本に興味深い記載があった。米国の企業組織論の中でだが、クリエイティブであり続ける組織のマネジメントに関する記述で、実現可能なアイデアはいくらでもあるはずなので、組織がクリエイティブにならない原因は、部下のアイデアや能力が足りないのではなく、上司のアイデアを受け入れる力が足りないのだと指摘する。マネジメントする側が、部下のアイデアを検証する前から、思いつく限りの欠点や問題を指摘し、潰す評論家のようにふるまわないことが必要だという。日本の組織では、もっと身近にありがちな話しではないだろうか。
そしてこれは、そのまま子供の教育に対する指導者や保護者の立場に置き換えることができそうだ。失敗させまいと、子供の悪いところを強く指摘することで、そもそものやる気を失わせてしまってはいないだろうか。それは、勉強だけに限らない。成長ではなく、短期的な勝利を優先してしまうような少年スポーツの指導にも当てはまりそうだ。型に強くはめすぎる指導は、初期は早く伸びるかもしれないが、いやいやの練習を誘発し、自ら創意工夫し、努力を惜しまず伸び続けようとする原動力となる気持ちを削いでしまうことになる。
では、どうすればよいか。この答も列記されていた。あら探しをしない。失敗しても、叱責するのではなく、次へ向けての気持ちを引き出し、励まし、後押しする。もしその失敗を自分がやったなら、どう扱われたいか、どう扱われたらやる気になるだろうか、と考えれば、どう扱うのがよいかの正解を探すのは容易だろう。
さらに好奇心を刺激することが大切だと説く。それには質問が有効。指導する側が命令ではなく質問で、追い込むような質問ではなく問いかけで気づきを引き出す。そして本人の疑問からの質問を導き、それを認め聞き入れる姿勢がカギだ。
すべて、そのまま教育に対しても、示唆的ではないだろうか。
※この内容は2022/12塾だよりに掲載したものです。
コロナ禍が長期化して、子供たちへの影響がじわじわと表面化してきている気がする。3年近くという期間は、従来なら体験できたはずの多くを失ったまま、受験学年の生徒たちは、高校生活、中学生活を過ぎ、次のステージに進まざるを得ない。
来年度新卒の学生たちの就活時期には「ガクチカ」のネタがないというのが話題になった。「ガクチカ」とは「学生時代に力を入れたこと」を略した、就活での定番の質問のことである。確かに、学業だけでなく、サークル活動やアルバイトなど、学説自体にしかできない体験のほとんどを知らずに社会にでることになる。それでも受験生の中高生たちと比べれば最初の一年間があっただけましなのかもしれない。
しかし、過ぎ去った過去について言及しても得られるものはない。前向きに好奇心をもって次のステージに進むために、今できることに集中してほしいと願う。
そして、来る新年、さらにその先の未来が彼らにとって素晴らしいものになるように、明るく前向きに、夢と希望を抱いて進むことを願う。
私たちもできることをやり遂げることで、応援していきます。