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[巻頭言2023/01より] フィードバックの重要性

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2023年1月号)

フィードバックの重要性

 「TOP GUN」という名称は、今年、映画続編が大ヒットしたので、皆様ご存じであろう(実は私は新作も前作も見ていないので内容を知らないのだが…)。ベトナム戦争時に空中戦での戦績が悪いことに対して、航空格闘戦いわゆるドッグファイトの訓練のために作ったアメリカ海軍戦闘機兵器学校という組織の通称だという。厳しい訓練を習得したあと、部隊に戻り、その技術を教導し、同様の組織を作らなかった空軍の戦績が変わらなかったのに対して、大幅に向上させたそうだ。

 これを聞くと厳しい「訓練」によって能力を伸ばしたと、単純に思い込みがちだが、実際に大きな効果を発揮した要因は、少々違うらしい。

 前提として「コンフォートゾーンの外」に追い出す訓練だったこと。コンフォートゾーンの外とは能力の限界を少し超えた負荷をかけた過酷な状態という意味だ。

 その上で、最も効果があった要因は、フィードバックに基づく再訓練だったという。訓練では能力の高い教官が圧勝する。その直後に、録画した映像を見ながら、そのときの状況判断について、振り返り、気づかせる質問をすることで、自分で考えさせる。翌日、同じ状況で再度訓練をする。これを繰り返したのだそうだ。

 勉強に限らず、どんなことでも努力は重要であることは間違いない。しかし、ただ努力するだけでは能力は伸びないということを、正しく理解する必要がある。

 3つの誤解の排除が必要だという。1つ目は、能力の限界は遺伝的特徴で決まると考える誤解。2つ目は、長い間継続すれば上達するという誤解(ただ継続するだけでは、停滞し緩やかな低下を招く)。最後は、努力さえすれば上達するという考え方(改善すべき課題を特定し、そのための練習法でなければ能力は伸びない)。

 課題を自ら見つけ、考え、立ち向かわすためには、その訓練をフィードバックする役割が大切ということになるだろう。それこそが私たちの仕事である。

※この内容は2023/01塾だよりに掲載したものです。
 映画のTOP GUN、正月の休みを利用して、ようやく1作目だけは見た。(2作目はまだ見ていない(苦笑;)
 映画では、物語に必要な最低限の部分は取り上げられたところもあるが、この通称TOP GUNと呼ばれている、アメリカ海軍戦闘機兵器学校United States Navy Fighter Weapons Schoolという組織自体については深くは述べられていない。元の論文が見つからず、引用の伝聞情報からで、引用元により数値等が異なるものがあるのだが少しまとめておく。
 ベトナム戦争の初期に、米海軍1機失うごとに、北ベトナム軍3.7機の割合で撃墜していたのが、1:2に低下、1968年には1:1にまで下がる。
 その対策として設立されたのがアメリカ海軍戦闘機兵器学校、通称TOP GUNなのだそうだ。研修生は、海軍の中でも優秀なパイロットが選抜されたが、教官には、さらに最高のパイロットが選ばれ敵役となって、毎日、撃墜寸前まで追い込むような戦闘演習を繰り返す。研修生は定期的に入れ替わるが、教官はずっと残って経験を積むので、圧倒的な差になったらしい。
 ポイントはそれからだ。訓練の後には必ずセッションが行われ、データをみながら何を考え、どう選択し、他にどんな選択肢があるかを徹底して詰問され考えさせられたという。そしてまた実戦訓練の繰り返し。
 それらを通して、比較にならないほどの経験を積んだ訓練生が、こんどは所属部隊に戻り、訓練担当として周囲のパイロットに伝えていったそうだ。
 結果は劇的で、1969年の空爆停止期間ののちの1970年から1973年には1:12.5になったという。さらに、この劇的効果から、空軍も加えてベトナム戦争終結後も訓練は続けられ、湾岸戦争の初期には1:37と歴史上の例のない圧倒的な勝率になったという。
 
 質の高い指導者の育成こそ、私たちが取り組むべきテーマである。
 ヒントはまだまだたくさんある。一つずつ取り組んでいこう。