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[巻頭言2012/06より] 閃く楽しさ!

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Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2012年06月号)

閃く楽しさ!!

 難高研、難大会の合間を縫って「全国模擬授業大会・国際大会」に招かれ、足利まで行ってきた。このイベントは、全国のさまざまな塾の先生たちが模擬授業で授業技術を競い合うもの。他流試合だ。日本最古の学校といわれる「足利学校」にちなんで足利で開催。今回は韓国の先生たちによる英語だけで英語を教えるという模擬授業も行われた。そのプレイベントでの講演と審査委員を依頼されて初めて参加。さすがに全国の塾から塾内予選などで選抜された先生たち、そのトークの技術はなかなかのレベル。短い時間で審査員からの高得点を狙うためのパフォーマンスやサクラの応援などを差し引いても、日頃からよく授業を練りこんで練習しているのがよくわかった。

 しかし、ただ何でもわかりやすくと教え込む授業をするのでよいのだろうか。勉強の楽しさは、自分でわかって閃いたときの瞬間に生まれる。その大切な瞬間を奪い取ってしまって、単なる解法のパターン学習に終始してしまっていることに危惧を抱いた。そして私たちの塾の指導の対話参加型授業のよいところを再認識する機会となった。自分で考え、解決できる人に育てるにはどうすればよいか、さらに研鑚を積んでいこうと決意して帰路についた。

 保護者の役割も大切。難高研AP、これからの皆様、ぜひご参加ください。

※この内容は2012/06塾だよりに掲載したものです。
 全国模擬授業大会に招待されたときのことである。この大会は、このあと拡大して、春に足利、秋に名古屋での年2回の開催となって、コロナ禍での中断はあるが、もちろん今も続く。このときは、ちょうど高校の学習指導要領改革で、英語のオールイングリッシュ授業が注目されていたため、先行する韓国の先生たちを招いての講演とデモンストレーション授業も企画され、国際大会となった。
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 模擬授業大会は、塾・予備校の先生たちの対決の場。ただし模擬授業という形の制約から、導入部分に限られ、さらに得点を競うために、年々見栄え・点数映えを意識した内容になったり、その分、揺れ戻しで厳しめの採点になり戻ったり、と変化しながら継続している。

 初日の、韓国の事情の紹介とデモンストレーションに続いての基調講演に招待された。ちょうどこの頃、あちこちで講演の機会をたくさんいただいた。このときは、学力とは何かというお題を頂戴して、授業をどうよく見せるかより前に、そもそも求める学力とは何であるかが大切だ、という話を実例を紹介しながらお話した。
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(講演台から撮影(笑))

 2日目が大会本選本番。科目別予選と科目別決勝で各チャンピオンを選出、最後に一同集結して、最終決勝でグランドチャンピオンを競う。
 予選から最終決勝まで審査員も担当し、数学の科目別決勝では講評もお話させていただいた。審査員は、朝から夕方までの長時間に渡り多数の授業を集中して見て評価するため相当消耗し生徒の気持ちもよくわかった。そしてその経験を活かして、翌年からは、他の研修担当などのスタッフを送り、そちらに任せることにした(笑)。
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(表彰式での審査員席から撮影(笑))

 さて、審査員としてみていて、やはり一番気になったのは、すでにわかっている解き方や答えを、どう「わかりやすく」教えるかという視点に重心が寄り過ぎている点だ。この「わかりやすく」という意味が微妙で、「わかる」ことを体験させることを「容易」にするのではなく、「できる」ようにするやり方を「わかりやすく」することに主眼が行き過ぎている。いわゆる塾は受験解法パターンの詰め込みとの批判を受けるのはそういうことではないだろうか。
 それに対して、本来の指導は、入試問題を通して、自力で「わかる」ための、メタ認知的な頭の使い方を教えて、そのトレーニングをすることが大切であると考える。
 そこを鍛えなければ通用しない方向に入試問題に進もうとしていることは大歓迎である。それに対して、私たち塾・予備校は、真正面から、求められている学力とはという問題に向かい合った上で、それをどう伸ばすのかの答えを探して、取り組んでいくことを目指すべきであろう。
 ただし、いつもの繰り返しになるが、現状の入試改革が、思考力より、瞬発的な判断力に、ややウェイトが行き過ぎている点は歓迎しないが...。

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3日目、足利フラワーパークや足利学校などに案内していただき歓待いただいた。