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[巻頭言2011/12より] 挑戦は、いつからでも

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2011年12月号)

決断!

 お恥ずかしい話なのだが、学生時代にサボったツケがまだまだたくさんある。もちろん遠回りした分だけ別の経験となり、それが結局は今に活きて繋がっているので後悔ばかりではないのだが...。

 大学で学んだ数学や物理の中で、理解を伴わずに、とりあえず単位をとるためだけで通過してしまったものはとくにすっきりしない。心残りのものが少なくない。つい先日のこと、ちょっと前に気になって購入した物理数学の本を寝る前に手に取ってみた。すると、パラパラと数ページ読み進んだだけなのだが、長年のもやもやの向こうにあったものが、はっきりと姿を見せた。数式の背後にあった感覚的な理解がつかめた瞬間! なんだそういうことだったのか。それを早く言ってくれ、とスッキリ爽快感。

 挑戦は、いつからでもできる。Samuel Ullmanの「青春とは人生の一時期のことではなく心のあり方のことだ」の一節で始まる「青春」という詩を連想した。

 保護者の皆様も、子供たちに諦めずに挑戦する勇気を、身を持って示していただきたいと願う。

※この内容は2011/12塾だよりに掲載したものです。
ファイル 593-1.jpg
 という式である。
 11年前のある日のできごとだ。
 このときの話は、このあと何度かあちこちで書いたり、話したりしたことがある。それだけ強烈な記憶に残った。
 ベクトル解析という分野の中の基本的な式だった。他の式(演算子といってdivやgradや∇(ナブラ)などが出てくる)はなんとかわかった(つもりだった)が、この式だけ物理的なイメージが掴めない。真ん中のマイナスがとくに曲者で、その根本的な意味を理解できなかった。もちろん授業に出て、真面目に勉強していればわかったのかもしれない。周りの友人たちに聞いたが、少なくとも彼らもわかってなかっただけでなく、そこはいいからさっさと勉強して単位とろうぜなどと忠告された(苦笑;)。結局諦めて、そのまま単位を取るため試験勉強だけとなり、幸い再履修にならない程度の点数だったのだろう。そのまま過ぎ去って忘れてしまっていた記憶。
 数十年のときを経て、たまたま立ち寄った神保町三省堂書店本店。上から下まで、隈なく見て歩いていたときに、2011年9月21日発刊とあるので、その直後だったのだろう。平積みされていた「物理数学の直観的方法―理工系で学ぶ数学「難所突破」の特効薬〈普及版〉(長沼伸一郎著)」というブルーバックスに出会った。
 そのまま積んでおいた数日後、何気なくパラパラみていて、このときの記憶がよみがえり、数ページ読んだだけで氷解した。なんだ、そういう意味だったのかと。このときに感じた爽快感こそ「わかった」の瞬間。学びの楽しさの本質ではないかと考える。
 そんな体験を子供たちに伝えていきたいと願う。
 頑張ります。

 ※この話は、あちこちで話してきているが、今まで、この式の中身にまで続けて聞かれたことがないのが残念...。
 興味が湧いた方は、以下の本をお読みください。
 (ただし理工系出身で、分からなかったままにしたという体験者しかわからないかもしれません。また、最近の大学の教科書は昔と違って、わかりやすいものがいろいろ工夫してでているようです。)