Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2024年1月号)
「情報」教育の必要性とは
東大が、共通テストの情報Iの配点を100点とすることを発表した。2025年春から共通テストは新課程入試となり、大きな変更がいくつか行われる。その中の注目点が新教科の情報I。北大が早々に、受験必修・配点0と公表し、旧帝大を始め国公立大で対応が完全に分かれた(他科目に対して、低:同:高=6:3:1程度か)。東大は共通テストの配点自体がもともと低いなどの意見もいろいろとはあるだろう。
入試の話は一旦脇に置いて、そもそもの「情報」という教科について考えてみよう。古い感覚の方は、「情報」=『パソコンの使い方』(いわゆるパソコン教室のようなイメージ)を想像されたかもしれない。大昔のプログラミングができないと何にも使えなかった時代とは既に大きく異なるが、「情弱」という揶揄するような言葉もあるくらいで、どう使うかの能力格差は拡がってはいる。しかしだからといって、使い方を学ばせたり、単なる(現状の)用語知識を詰め込んだり、ましてや、コーディング専門のプログラマーを大量養成しようとしているのではあるまい。
指導要領改訂の基本方針には「未来社会を切り拓ひらくための資質・能力を一層確実に育成」するために、「知識及び技能の習得と思考力,判断力,表現力等とをバランスよく育成」とある。そして「情報」という教科は「情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し,受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる力や情報モラル等,情報活用能力を含む学習を一層充実する」ことを目指すそうだ。
若き日に関連分野を専門として学んだ立場からすると、単なるプログラミング教室化ならば肯定的意義を感じないが、所謂「プログラミング思考」を若いときに学習する重要性はよく理解できる。そしてコロナ禍やChatGPTの登場などでの見聞から、日本人の大多数の数理的理解力や論理的思考力の不足も大いに実感した。
日本では入試がないと真剣に学習しない現実もある。まずは始めるしかないか。
※この内容は2024/1塾だよりに掲載したものです。
さて、いよいよである。改訂される新しい共通テストに向けて受験生たちが実践的な対策の時期の夏期講習中だ。
はたして、初めての情報Iはどうなるか。出題を担当する大学入試センターでもどの程度のレベル感にすればよいのか恐る恐るといったとこだろうか。過去の傾向などを踏まえると、改革初年度ということで、なんとなく易し目になりそうな気がする。試作問題から予想すると、問われている「学力」に対しての、設問の文章量が多すぎて、判断力の処理時間勝負になるかもしれないが、あまり深く思考力が必要なレベルの問題にはならないと予想する。結局あまり得点差はつかないのではないだろうか。
試作問題に対しては、いろいろと言いたいこともあるが、この科目で問いたいのはこういう力と言われれば、それはそれで納得ではある。いっそのこと、数学の中でかなりの幅を利かせてきている統計分野をこっちに移動してくれた方がよいような気もしてきた。おまけに、配点も200点にしてもよいかも(笑)。
受験生の皆さん、恐れずに準備しましょう。
きちんと問題を読んで正しく理解して、その場で考える論理力が問われているだけです。パターン暗記のような学習では通じないけれど、本質的な理解と考える力を伸ばすつもりで臨めば、そんなに怖くないよ。