Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2024年4月号)
デジタル教科書化元年
学校では新年度、進学進級の区切りの月である。環境が大きく変化する生徒も少なくないだろう。早く慣れて、力を発揮してほしいと誰もが願うところだ。
先日、機会を得てOECD Japan開催の「PISA2022」セミナーにオンライン参加した。PISAとはOECDが実施する81か国・地域69万人の生徒参加の国際学習到達度比較調査(Programme for International Student Assessment)で、昨年末マスコミ等が、2022年の結果で日本が実施3分野(数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシー)すべてでトップクラスと報道したので、皆様もすでにご承知のことと思う。
コロナ禍でOECD平均が低下する中、日本は上昇した。その原因は、休校期間の短さ、学習指導要領改訂、ICTの環境整備と習熟などが報告された。さらに今回は数学的リテラシーが集中分析テーマで要因分析の報告もあった。結果がトップかではなく、比較対照によって課題点をみつけ、今後の改善に向かうことが大切なはずだ。
気になった要因分析として、日本の学校では授業でのデジタルリソースの利用時間が最下位レベルだが、数学の授業でのデジタルリソース利用に対して注意散漫になる割合の低さでは、圧倒的1位という結果。また、デジタルリソース利用と成績の関係では、長時間になるほど点数は低下するという逆相関だが、まったく利用がないよりは1時間未満の利用の方が高得点という国際的な結果だった。
さて、いよいよ今年、文科省主導の下、小5から中3の英語でデジタル教科書化がされる(他の教科も段階的に予定)。確かに、英語では音声や検索で有効だろう。また探求型学習や情報では利用は欠かせない。今のところ、親子とも期待が多いとの調査もあるが、いざ導入となれば、反対意見、慎重論も多数出るに違いない。
もはや、どちらが良いかではなく、どう有効に活用していくかが問われる。私たちも、やや保守的に構えはするが、実証が伴うものは積極的に挑戦するつもりだ。
※この内容は2024/4塾だよりに掲載したものです。
このOECD Japan「PISA2022」セミナーは、今回は、中心分析のテーマが数学的リテラシーということで、たまたま紹介を受けてオンラインで参加した。そこで報告された内容は、非常に興味深く、上記に触れた点以外にもたくさんの気づきを得た。
詳細資料は、現在公開されているので、直接参照いただければと思う。
https://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/oecd/1419662_00005.htm
このような調査結果を踏まえて、今後の教育の方向性を考えていくことが重要だが、これまでの日本の教育では、きちんとエビデンスを踏まえて施策がされてきたとはいえない。デジタル教科書化のみならず、ICT、DX化も、先に結論ありきで、都合の良い部分だけ調査結果をつまみ食いするようなことがないことを祈る。
日本の公教育では、部分的限定的でも、比較対照実験を試みることは、感情的な不公平感を生みやすく、容易ではない。国際調査結果を正しく読み解くことは重要だ。
このデータを基にしたテーマで、民間教育大賞授賞式記念のパネルディスカッションにパネラーとして登壇した(概要は以下に公開中です)。
http://www.juku-kyoiku.com/contents/pdf/minkan/2023/03.pdf