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[巻頭言2013/04より] ちょっと背中を押す

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2013年04月号)

ちょっと背中を押す

 塾では3月から新年度が始まり、続いて春期講習中である。学校でも、この4月、いよいよ新入学、または新しい学年に進級するときだ。

 新しいスタートは、ワクワクする。と同時にドキドキする不安な気持ちも強くなる。どんな未知への挑戦も、高鳴る高揚とともに必ず躊躇する気持ちが生まれる。怖がることはいけないのかというとそうではない。何物も恐れない行動は、勇気ではなく粗野な行動、すなわち蛮行なのだそうだ。真の勇気は、恐怖の感情を理性でコントロールして行動することから生まれる。

 未知の問題にチャレンジするときもよく似ている。後先考えずにでたらめに試行するだけでは正解にたどり着く可能性はとても低い。そして、いつまでもゴールできない疲弊感から、やり続けることができず、行動自体を停止してしまう。ただ運に頼るだけの姿勢では、運も呼び込めないのだ。

 だからといって最初から正解を求めすぎてもいけない。得点をとることにとらわれすぎた生徒ほど、いきなり正解だけを得ようとして、試行する行動がスタートできない。過程での間違えを恐れすぎては、挑戦する気持ちも芽生えない。そして、解けなければ、解き方だけ覚えて、その場だけ解決するようになってしまう。

 知能の高い子ほど後者になりがちであることに注意しなければならない。行動する前に悪い結果を予想してしまい行動を始めることができなくなりがちなのだ。

 そんなときは、横にいる大人が、過程の失敗をよいと認めてプラスの感情に変え、挑戦したこと自体を誉めてほしい。子供がちょっと不安になって振り返ったとき、親が笑顔で大丈夫とちょっとだけ背中を押すことが、次の前進への勇気を生む。

※この内容は2013/04塾だよりに掲載したものです。
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 同じ号の記事に掲載されていた写真である。
 社員合宿の写真。社員が3名しかいなかった時代から、20数年続く行事。当初から社内の研修や教育機関見学などと同時に、他塾の校舎を見学し、そこの取り組みの話を聴くものをセットにして実施してきた。コロナ禍でここ3年は中止。それ以前数年は、塾の成長とともに社員の数が増えて、受け入れ先としてお願いできる他社を準備できなくなり、社内研修のみのスタイルに変更せざる得ないことになった。
 貸し切りバスなどでの近県他塾訪問が多く、新幹線で移動したことも2回ほどあった。
 他社を見学することで学ぶことは、非常にたくさんある。現場でなければ気づけないものは少なくない。
 このような外から学ぶときには大切な姿勢が二つある。ひとつは、自分たちと異なる視点のものを見つけなければならないこと。意識しなければ、どうしても自分たちが「良い」と思う考えと「同じもの」を見つけて、やっぱりね、と安易な「肯定」をしてしまう。また自分たちの考えとは「違うもの」に対して「違う」と短絡的に「否定」する。このような姿勢では、改革や進歩を生み出さない。脳は、意図的に圧力を加えないと、同じ繰り返しの省エネを選択するのだ。
 第二は、本質を考えること。他でうまくいっていることを、そのまま丸ごと真似して取り込もうとしても、ほとんどはうまくいかない。その本質的なカギとなっている原理自体がどこにあるかをきちんと見極めて、そこから私たちならどうするべきかという考えで新しく組み立てていかなければ、成果の上がるものには発展しない。
そのような考え方で、取り組んできた。常に新しい視点で仕事を見つめ続けていなければ、停滞し陳腐化し衰退する。
 外からを刺激として、内から新しい発想が生み出す。
 学びとは、要領よく真似して答えを覚えることではなく、本質を自ら考え、理解し、それを応用し成果を上げるまで努力し続けることであろう。
 学ぶのは、塾生たちが主役であるが、その前にスタッフたちが主役として学ぶことから始まる。
 コロナ禍で、人と人との交流が簡単ではなくなっている現在こそ、意識的に取り組んでいこう。

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(例年、春の恒例行事。写真はこのときに見学した満開だった上智大学名物の土手の桜並木)
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