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[巻頭言2013/02より] 受験は団体戦!

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Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2013年02月号)

受験は団体戦!

 入試シーズンの序盤戦を終えて、いよいよ中盤戦から後半戦である。これがお手元に届くころには、中学入試はいよいよ都内入試と県内2次、高校入試は私立高校の後期入試から公立高校前期入試へ、大学入試は私大個別試験スタートの時期だろう。

 序盤戦から好調の生徒や、もう第一志望校合格が決まった生徒もいるが、中には十分に力を発揮できず苦戦している生徒もいる。もし、まだ思う通りの結果が得られていないとすれば、それは大きく成長するチャンスだ。自分の中の何か足りないものを逃げずに見つめて、諦めずに解決することができれば、その分だけ力は伸びる。学力が一番伸びるのは、入試の本番なのだ。最後まであきらめずに努力することで、自らの力で、必ず成果を掴んでくれるものと期待している。

 毎年書いているが、入試は団体戦だ。諦めずにやり続けるには、人の心はあまり強くない。一人ではなかなか頑張れない。一緒に頑張る仲間がいるから、元気出て、力も出る。そして自分と同じように努力した仲間たちが、合格したということから生まれる自信。自分が頑張る姿が、ともに立ち向かう友へ勇気を与える。切磋琢磨してきた仲間たちと最後までお互いにエールを送りあうことで、お互いの力がより大きく発揮できる。がんばれ受験生!

 さて、今年もやります! 千葉テレビ公立高校入試解答解説の番組を今年も生放送で担当させていただきます。少しでも受験生たちへの励みになるよう頑張って準備します。ご期待ください。

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※この内容は2013/02塾だよりに掲載したものです。
 仲間とともに頑張ることで大きな力を生み出す。毎年、入試時期に、それを実感する。強い気持ちを持ち頑張る仲間がただ周りにいるだけでも、お互いに良い方向に相互に作用することがよくわかる。まさしく切磋琢磨である。
 もちろん、それは入試時期だけに限った話ではない。それまでのそれぞれの時間に作用してきたはずだ。それが、入試時期の緊迫した空気によって明らかになっただけに過ぎない。
 そしてそれは、長い時間、苦楽を共にした仲間意識があるほどより強く効果を持つ。また仲良しであることが必要なのではない。ライバルとみなして競い合っているうちにお互いを認め高め合う仲間になる。受験生の夏期講習は、その大きな体験の場となることを考えて企画し用意している。
 ライバルとの切磋琢磨から友情が生まれる構図は、スポーツのドラマ(子供たちには身近なアニメや漫画)の世界では、繰り返し描かれてきているものだろう。勉強の世界でもそれはたくさん存在し、かつとても大切なのだ。
 まず目の前の努力に集中しよう。
 頑張れ受験生。

※ その真の意味でのライバルとの切磋琢磨の様子がよくわかるのが「合格者の言葉」の中にもたくさんある。web版も公開しているのでぜひお読みください。
http://www.jasmec.co.jp/gokaku/gokakusha/gokakusha.htm

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[巻頭言2012/12より] 悲観 to 楽観!

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2012年12月号)

悲観 to 楽観!

 今年も早いもので、もう年末である。房総半島は、日本で一番紅葉の遅い地域なのだそうだが、その季節ももう過ぎつつある。

 ところで、紅葉の名所は、夏は暑く冬は寒い、気候の厳しい場所だ。厳しい気候を過ごすことで、色鮮やかに秋を彩る。

 受験勉強も同じところがある。厳しい努力を積み重ねた者だけが、充実した結実のときを迎える。結果を残すものは常にストイックだ。厳しく自分を追い込むことで、はじめて自分自身を磨くことができるのだ。たぶんできるだろう、なんとかなるだろうという甘い予断は禁物、必ず最後には失敗を招く。準備のときは、最悪の悲観的な予測に基づいての準備が必要だ。

 しかし、いざ本番に挑戦するときは、悲観的では持っている力を発揮することができない。ひょっとしたら失敗するかもという感性的な不安が少しでもあると、それが失敗を招き起こす。必ずできる、成功すると信じている状態でなければ、うまくいかない。しかもそれは、信じていると頭で考えているレベルではまだ足りない。潜在意識で確信している状態までいきつかないと最大限の力は出ないのだ。そして、そのコツは本番でしかつかめない。

 いよいよその本番の挑戦の時期が近づいてきた。今は最悪の状態からでも力を発揮できるように、最後の準備のとき。もっとも悲観的な条件を想定して精一杯、準備しよう。

 冬来たりなば、春遠からじ。

※この内容は2012/12塾だよりに掲載したものです。
 毎度の季節外れである。話の流れなのでご容赦いただくとして...。
 何度となく繰り返し取り上げてきた「長期的楽観と短期的悲観」がテーマである。いわゆる「ストックデールの逆説」である。
 (ストックデールの逆説については、過去の当ブログ記事を参照ください)
 http://www.jasmec.co.jp/cgi-bin/diarykan/diary.cgi?no=446

 たくさんの経験を積み重ねてきた大人は、子供に対して、つい、目の前の「短期的悲観」を認めさせようとしてしまう。厳しい現実に直面していることを認めさせようとして、つい現実を「否定」する言葉がでてしまう。すると、子供は自己防衛として、逆の反応を起こす。親はそれに対して、さらに否定しようとして、衝突が起きる。ありがちな構図であろう。
 親の考えが「正しい」ことを主張しても問題は解決しない。親がするべきことは、子供の「考え方」を正しい方向に導き、子供の「行動」を変えることである。
 そのためには、「肯定」から入る方がよい。子供の「未来」を強く肯定し、子供が自身でそこに進みたいという気持ちを強く引き出すことだ。それから、そこに至るまでの経路を考えさせて、現実を見つめさせるようにするのがよいだろう。そうすれば現実を正しく悲観的に評価できるようになる。
 過去を否定することで現実を悲観的にさせるのではなく、未来を楽観することで、現実を悲観的に評価させるというべきか。
親の心得、指導者の心得として「長期的楽観と短期的悲観」の順で考えるべきあり、「短期的悲観と長期的楽観」の順ではない、としておく。冒頭の本題のタイトルも「悲観 to 楽観」は不正確で、正しくは「form 楽観, 悲観 to 楽観」とするべきか。
 子供たちが、常に明るく前向きに、夢と希望を抱いて、素直な心で進んでほしい。

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[巻頭言2012/11より] 今やっていることを好きになる!!

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2012年11月号)

今やっていることを好きになる!!

 山中先生のノーベル賞受賞後のインタビュー番組を見た。この番組インタビューアーは、今年の難関高校受験研究会Special Programでご講演いただいた竹内薫さん。科学や数学の解説でご活躍されているだけあって、一般視聴者でもわかる内容だった。とくに、いわゆる山中4因子の絞り込みの決め手になった高橋助手のアイデアのくだりは、新聞などの断片的な解説などで予想はしていたが、なるほどという解説になっていてわかりやすかった。

 最後の場面で、「科学者とは」という質問に対して、誰も知らない「"不思議" に真っ先に出会える」、「本当に、こんな面白い仕事はない」という言葉で表現されていた。そして、「どんどん続いていく若者」が出てほしいと感動的な言葉でしめられた。ちょうど2年前にお聞きした、同じノーベル賞受賞記念の根岸博士の安田講堂での講演を思い出した。(Kan's blog 2010/12/01)

 結局、道を究める人たちは、そのこと自体が好きで面白くて突き進むのだ。だが、山中先生も、はじめは臨床医を目指していて挫折したエピソードがあちこちで紹介されていたように、最初のきっかけは自分では思って意外なところにあるかもしれない。どんなきっかけでも、ただひたすら頑張ってやっているうちに、それがどんどん好きになっていく。それがなかった道を開く。今やっていることを好きになること、それがすべての始まりなのだ。

※この内容は2012/11塾だよりに掲載したものです。
 道を究め、切り拓く人たちは、結局は「面白いから」に尽きるのではないだろうか。ノーベル賞受賞者に限った話ではないが、ノーベル賞のような、究めた人にしかたどり着かない業績まで走り続けた人たちに共通するコメントの中で一番多いように思う。
 勉強の道で、一番遠くまで駆け抜けていく子供たちを、非常にたくさん見てきて、同じように感じる。早い時期から効率を求めて結果を残すことを優先するよりも、多少遠回りをさせても、自分の手で未知を知に変えて、「面白い」を体験した子供たちの方が後半になると圧倒的に強い。彼らは、何かを手に入れるための手段として、我慢して勉強をするのではなく、それ自体が面白いからやり続ける。そして決して折れることはない。
 塾生の一人ひとりのこの夏が、そんな面白いが体験できる夏になることを願う。

[巻頭言2012/09より] もうだめだと思ったときが勉強の始まり!!

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2012年09月号)

もうだめだと思ったときが勉強の始まり!!

 夏期講習も無事終了。今年は、地域によっては、学校の夏休みがかなり早く始まって早く終わるので日程が厳しかったが、全てを予定通り終了した。

 受験生は朝から暗くなるまでびっしりのスケジュールを乗り越えた。始める前はこんなに頑張れないと思っていた生徒も多かったに違いない。でもやってみると、自分が思っていたより、本当はずっと大きな頑張れる力を持っていたことに気づいたはずだ。

 人の限界は自分自身の心が決めている。自分でここまでだと思った瞬間にそれがその人の限界になってしまう。本当の限界はまだもっと先にあるのに、自分自身で諦めてしまって限界を作ってしまうのだ。もし、もうだめだと思わずに、まだ限界ではないと強く信念を持ち、諦めずにそれを越えようとする気持ちで、必死にもがきながらもチャレンジし続けると、どこかでスッと限界を超えてもっと遠くまで進むことができるようになる。

 これは限界だと思っていたところまで、必死に頑張ったときにしか体験できない感覚なのだ。この夏、受験生たちはその体験をしたはずだ。いよいよ実りの秋、試されるのはこれから。まずできると信じよう。そしてどうすればできるかだけを考えよう。もうだめだと思ったときが、勉強の始まり。

※この内容は2012/09塾だよりに掲載したものです。
 脳科学の話の繰り返しになるが、ここがゴールだと思うことは「否定語」に働くという。その意味ではここが限界だと思うことも当然否定語として働くだろう。
 否定語は、脳の働きにブレーキをかけるそうだ。もう少しでゴールだと考えることや、この先で限界だと思うことで、脳の活動にブレーキがかかり、その手前から行動も落ちていく。限界だと決めつけずに、今は難しく感じるが、まだ進めるはずだと強く思うことによって、そのブレーキを弱めることが可能となる。
 未来への連続する時間の理解は、成長のかなり遅い時期に発達するという。子供は、困難に対して自分の力で努力して突破した体験が多くはないので、感覚的に現在の困難を超えた先を想像することが難しい。
 適切な壁を与え、自力で一つひとつをクリアすることで、その経験から会得させていくしかない。
 今年の夏も、塾生にとって、その夏になることを願う。

[巻頭言2012/08より] 夢を語る!!

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2012年08月号)

夢を語る!!

 オリンピックもあまり観戦する暇なく、夏期講習前半が終了した。受験生にとってはこの夏は天王山。後期に向けて、お盆休み中に集中してほしい。

 ところで、オリンピックは頂上目指して競い合う者たちの祭典だ。彼らは夢を目指して努力した結果、そこに参加している。はじめにまず夢を描き、そこにたどり着くため、自分自身を磨き、そこにやってきた。

 最初に必要なこと、それは「夢」を描くこと。その点では、勉強も同じ。勉強して、~に合格したいは「夢」にはならない。そのずっと向こうにある心からワクワクするものを描くことが大切。ただし、現在から頑張れば必ずその未来に届くと潜在意識で確信できるものでなければ力は発揮できない。子供たちにとってその未来を描くことはなかなか難しい。反抗期から抜け出し始める高校受験期あたりからやっと出来始めるのだろう。

 大人が少しだけ力を貸してやると、最初は漠然とした夢も、徐々に具体的な映像として描けるようになり、素敵な色彩を放ち始める。ぜひ、親として本人が夢を語る作業に付き合っていただきたい。未来についての話を、ただ聞いてやればよいのだ。それも否定しないように、膨らませてやってほしい。

 そして大人たちも、自分自身の「夢」を描いて語ろうではないか。

※この内容は2012/08塾だよりに掲載したものです。
 成長と夢については、面白い研究がいくつかある。幼児の、年少から年長にかけての年齢別に大人になったらなりたいものと、そのためにどうすればいいと思うかについての分析だ。それによると、成長とともに、非現実的なもの(人間でないものや、TV、アニメなどのキャラクタなど)から、現実的に実現可能なものの割合が増えてくるだけでなく、それが実現するのに必要なものは、成長や時間の経過ではなく、努力と考えるようになるというのだ。また、これには過去、現在、未来という時間概念や時間的隔たりについての把握の成長と相関があり、さらに過去に対しての理解より、未来の長期的隔たりの理解の方が成長する時期が遅いのだそうだ。ただし、幼児の時間に対する連続性や隔たりの理解は、大人のものと同質であることは明らかにしにくいらしい。
 本題の、中高生の勉強に対する目標意識と成長の時期の関係も、経験的には同じように感じる。目標を明確にし、自分の努力で実現できるという確信が強い生徒ほど、努力を継続することができ達成する可能性は飛躍的に高くなる。
 もちろん、これは後天的な成長によるだろう。環境からくる周りからの影響で考え方や確信が変化し、行動が変わる可能性が高い。そうだとすると、高い効果を上げるような環境を作り出すことによって、勉強の成果を高めることができるはずだ。
 私たちは、長い間の経験によって、その差をつかんできたつもりだ。そしてまだまだ大きな余地を残していると考えている。
 塾生たちだけでなく、私たちの挑戦の夏は続く。

 最後に、注目すべき補足。なりたい理由についてのデータでは、成長により、「自分が好きなもの」から、その「役割が重要なもの」への割合が増加するらしい。

[巻頭言2012/07より] 何気ない一言でも!!

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2012年07月号)

何気ない一言でも!!

 先日、高校時代の友人たち4人で、担任の先生のお宅にお邪魔させていただいた。先生は、高校を定年退職された後、予備校で何年か教鞭をとられて、その後、ご勇退を機に、日当たりがよく暖かい南房総の別荘地に終の棲家を構えられた。数年前までは数学の大学入試問題の解説原稿なども送っていただいたりもしたが、今は傘寿を迎え、趣味の洋蘭を栽培して過ごされている。都内のご自宅もそのままにされていて、実は奥様は、寒くてもそちらの方にいらっしゃることが多いのだと、お元気に苦笑いされていた。

 ご馳走になりながら先生が教員になられたときのエピソードから始まり、高校時代の昔話などに花が咲いたのだが、先生や友達たちの、言った本人も覚えていない何気ない言葉がきっかけになって、人は影響されていることが多いとの話になった。実は私も進路の面談で「数学科か電子工学科に」と答えたら、「数学科に行くとだいたい先生になります」と言われて「先生にはなりたくないな」と電子工学科に進んだのだが...。

 人は人からの小さな影響の積み重ねで道が分かれていく。後あと「塾の先生の、あのときの一言で素晴らしい影響を受けた」と言ってもらえるように、どんなときでもスタッフたちと頑張ると気を引き締めて帰途についた。

※この内容は2012/07塾だよりに掲載したものです。
 先生は、今年初めに亡くなられた。別荘には、何度もお邪魔した。たくさんの人数でお邪魔してお庭でBBQもしたし、所要の際に少しだけ寄り道したこともあった。
 決して強く話されず、どちらかというと寡黙な方だったので、同級生一人ひとりに、時間がたっても印象深く残るようなエピソードがたくさんあるはずではないだろうと思うところなのだが、それぞれいろいろな話がでてくるものである。
 若き日の、少し違えば、なにげない日々に終わるかもしれなかったはずのその瞬間でも、のちに強い影響があるだろう。
 そう考えると、指導する側は一瞬でも油断することができない。
 指導する側には、毎年の繰り返しに見えてしまいがちな毎日も、子供たちにとっては一期一会。常に神経を研ぎ澄まし、全身全霊の気を注入する気持ちを忘れてはならない。
 すべての塾生の「この夏」が、いつか「あの夏」と振り返る夏になるように。

[巻頭言2012/06より] 閃く楽しさ!

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Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2012年06月号)

閃く楽しさ!!

 難高研、難大会の合間を縫って「全国模擬授業大会・国際大会」に招かれ、足利まで行ってきた。このイベントは、全国のさまざまな塾の先生たちが模擬授業で授業技術を競い合うもの。他流試合だ。日本最古の学校といわれる「足利学校」にちなんで足利で開催。今回は韓国の先生たちによる英語だけで英語を教えるという模擬授業も行われた。そのプレイベントでの講演と審査委員を依頼されて初めて参加。さすがに全国の塾から塾内予選などで選抜された先生たち、そのトークの技術はなかなかのレベル。短い時間で審査員からの高得点を狙うためのパフォーマンスやサクラの応援などを差し引いても、日頃からよく授業を練りこんで練習しているのがよくわかった。

 しかし、ただ何でもわかりやすくと教え込む授業をするのでよいのだろうか。勉強の楽しさは、自分でわかって閃いたときの瞬間に生まれる。その大切な瞬間を奪い取ってしまって、単なる解法のパターン学習に終始してしまっていることに危惧を抱いた。そして私たちの塾の指導の対話参加型授業のよいところを再認識する機会となった。自分で考え、解決できる人に育てるにはどうすればよいか、さらに研鑚を積んでいこうと決意して帰路についた。

 保護者の役割も大切。難高研AP、これからの皆様、ぜひご参加ください。

※この内容は2012/06塾だよりに掲載したものです。
 全国模擬授業大会に招待されたときのことである。この大会は、このあと拡大して、春に足利、秋に名古屋での年2回の開催となって、コロナ禍での中断はあるが、もちろん今も続く。このときは、ちょうど高校の学習指導要領改革で、英語のオールイングリッシュ授業が注目されていたため、先行する韓国の先生たちを招いての講演とデモンストレーション授業も企画され、国際大会となった。
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 模擬授業大会は、塾・予備校の先生たちの対決の場。ただし模擬授業という形の制約から、導入部分に限られ、さらに得点を競うために、年々見栄え・点数映えを意識した内容になったり、その分、揺れ戻しで厳しめの採点になり戻ったり、と変化しながら継続している。

 初日の、韓国の事情の紹介とデモンストレーションに続いての基調講演に招待された。ちょうどこの頃、あちこちで講演の機会をたくさんいただいた。このときは、学力とは何かというお題を頂戴して、授業をどうよく見せるかより前に、そもそも求める学力とは何であるかが大切だ、という話を実例を紹介しながらお話した。
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(講演台から撮影(笑))

 2日目が大会本選本番。科目別予選と科目別決勝で各チャンピオンを選出、最後に一同集結して、最終決勝でグランドチャンピオンを競う。
 予選から最終決勝まで審査員も担当し、数学の科目別決勝では講評もお話させていただいた。審査員は、朝から夕方までの長時間に渡り多数の授業を集中して見て評価するため相当消耗し生徒の気持ちもよくわかった。そしてその経験を活かして、翌年からは、他の研修担当などのスタッフを送り、そちらに任せることにした(笑)。
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(表彰式での審査員席から撮影(笑))

 さて、審査員としてみていて、やはり一番気になったのは、すでにわかっている解き方や答えを、どう「わかりやすく」教えるかという視点に重心が寄り過ぎている点だ。この「わかりやすく」という意味が微妙で、「わかる」ことを体験させることを「容易」にするのではなく、「できる」ようにするやり方を「わかりやすく」することに主眼が行き過ぎている。いわゆる塾は受験解法パターンの詰め込みとの批判を受けるのはそういうことではないだろうか。
 それに対して、本来の指導は、入試問題を通して、自力で「わかる」ための、メタ認知的な頭の使い方を教えて、そのトレーニングをすることが大切であると考える。
 そこを鍛えなければ通用しない方向に入試問題に進もうとしていることは大歓迎である。それに対して、私たち塾・予備校は、真正面から、求められている学力とはという問題に向かい合った上で、それをどう伸ばすのかの答えを探して、取り組んでいくことを目指すべきであろう。
 ただし、いつもの繰り返しになるが、現状の入試改革が、思考力より、瞬発的な判断力に、ややウェイトが行き過ぎている点は歓迎しないが...。

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3日目、足利フラワーパークや足利学校などに案内していただき歓待いただいた。

[巻頭言2022/07より] 切磋琢磨する場

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2022年07月号)

切磋琢磨する場

 先月は、不祥事およびその対応でいろいろとお騒がせしました。社員一同、厳しく反省し、謙虚に一つひとつを改めながら、指導により一層、励んでいきます。今回に限らず、厳しいお叱りを頂くこともありますが、それは、次への改善、改革のチャンスであると信じています。お気づきの点がありましたら、お知らせください。

 さて、先日、他塾の方たちの訪問見学を受け入れた。以前は、頻繁に機会があったのだが、コロナ禍でしばらく停止していたので久しぶりだ。状況が少し好転しているので、いろいろと警戒はしながらも、少し戻した状態。いつも、訪問で驚かれることは、授業中の生徒の様子だ。当然どこでも塾なので演習を中心とした時間は用意はしているが、導入や解説は、一方的に説明を聞くだけのスタイルがほとんどのようで、うちの塾生たちが積極的に楽しく考え発言している姿には驚かれる。

 しかし、それだけでなく私たちが当たり前と思っているような基本的なことに驚かれることも少なくない。今回は、同じ東進加盟校だったので、そこが際立った。もともと東進の全国大会での優秀事例校紹介で、うちのスタッフ研修について取り上げられたことがきっかけとなった。自分たちの常識は、他では当たり前ではない。

 この研修というものも、生徒たちの授業と同じ構図であろう。一方的に聞くだけでは、一時的な効き目があるかもしれないが長続きはしない。最近は、ディスカッションを中心にした研修も流行りではあるが、単なる形だけの自己流の意見主張に留まり教育的成果につながらないことが多い。学校の授業に目立つ班別の話し合いも同様かもしれない。意見を交わすことで相互に刺激しあい一人では閃かない考えを生み出す集団知性は理想だが、それを発揮できる状態にするのは難しい。

 私たちも持続的に成長するために、スタッフ研修も相互に刺激しあう形に変えてきている。漢方薬的な効果だが、やり続ければ大きく成長できる。頑張ります。

※この内容は2022/07塾だよりに掲載したものです。
 経営品質という考え方がある。とくにサービス業では重要であろう。どうしても各事業所、各スタッフ、そして時期や状況での品質のバラつきが生じる。工業製品では、製品の品質管理をきちんとすることで、このバラつきを小さく抑え込む改善をしているのだろう。それに対してサービス業では、この範囲を一定に抑え込むことは、一般に難しい。それでも定型サービスを提供するなら、いろいろと方法論もあるかもしれないが、対人の非定型業務は一段と困難である。単なるルーティンの作業のサービスではなく、顧客の状況に合わせて、一人一人に対応することが求められるからだ。
 教育の分野は、その典型だろう。学校が代表。
 属人的解決方法に頼りがちになり、そのサービス品質は人に大きく依存することになる。また個々の習熟に頼ることになり、生産性も上がりにくい。組織的に、それを一定のバラつきの中に抑えるのがなぜ厳しいかは、容易に想像もできる。学校の先生も大変であろう。
 経営品質管理のためには、教育に携わるスタッフ自体を「教育する」という、メタ構造の教育が非常に重要であると考える。
 いち早く、それに取り組んできた。だが、その過程は容易ではない。一つ一つを改善するとまた次の課題が見つかりという繰り返し。それでも一歩一歩進むしかないのだろう。
 幸い、私たちの塾の目指す教育に信念を持ち、熱い情熱をもつスタッフが揃っている。遠い道程の先には、大きな果実が待っていると信じて、前進するつもりである。

[巻頭言2012/05より]

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2012年05月号)

未来は素晴らしい!!

 今年も難関高校受験研究会Special Programにたくさんの保護者の皆様にご参加いただきありがとうございました。竹内先生の講演も興味深かったが、控室での「なべつぐ」先生の参考書の話で盛り上がったことも楽しかった。

 さて、どんな講演会でも、話を聞いてわかったつもりになっただけでは何も生み出さない。日々の実行のみが成果を生む。その意味では一昨年の篠原先生の脳科学の話は、私たちスタッフにとっても非常に意義深いものだった。その後、授業や生徒指導に脳科学の成果をさまざまな形で取り入れてきた。先生の話の中で「ゴールは近い」という言葉が脳には「否定語」として働くというものがあった。否定語は脳にとってブレーキを働かす効果があり、力が発揮できないという実証実験をされたというもの。脳にとっては自分自身の言葉が、一番影響力がある。子供が否定的な言葉を使わないようにするのも親の役割だ。そのために、親ができること、子供に話をするときは、否定批判はしない、常に肯定的に語る、そしてできれば素晴らしい未来を語ろう。

 難関高校受験研究会Advanced Program、難関大学受験研究会も始まる。学年ごとの保護者の役割についてもお話します。ぜひご参加ください。

※この内容は2012/05塾だよりに掲載したものです。
 冒頭の竹内先生とは、この年にご講演いただいたサイエンスライターの竹内薫先生のこと。テレビなどでもご活躍なので、ご存じであろう。当時フジテレビの「たけしのコマネチ大学数学科」という、数学の問題を真正面から取り扱ったクイズ番組が人気だった。クイズ番組などで、算数などが取り上げられることは少なくないが、テレビという構成上の制約のため少々瞬発的な問題がほとんどである。それに対して、この番組は、数学の問題を解く過程を、マス北野ことビートたけし対東大生の形でスポーツの実況中継風に放送し、解答と解説を竹内先生がするという7年半続いた人気番組だった。ただし深夜枠だったが...。
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 その竹内先生に、子供の勉強法についてご講演いただいたのだが、楽屋で数学の話をしていて「なべつぐ」の問題集の話で盛り上がり、講演の中でもちらっと触れていただいた。「なべつぐ」とは、昔予備校の名物講師だった渡辺次男氏が書かれた「なべつぐのあすなろ数学」という伝説の数学参考書問題集のこと。
個の問題集は受験生時代に使って衝撃を受け、のちに塾で指導する上で大きな影響を受けた。

 コロナ禍で最初の緊急事態宣言のときに、GWをうちで楽しく過ごそうということで、Facebookで「7日間ブックカバーチャレンジ」というのが流行った。自分が影響を受けた本をFB友達に紹介するというもの。そのときにもこの問題集に触れた。以下にそのまま転載。

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  • ブックカバーチャレンジ 3/7
    7日分に絞るのは結構厳しいですね。
    なべつぐのあすなろ数学 渡辺次男
    伝説の数学参考書問題集
    受験生当時、これは画期的と思いました。
    解説が、先生と生徒の会話調で進む。
    本は袋とじ。「解けたと思ったらペーパーナイフで切って、次のページへ」など、途中で飽きないような工夫。
    さらに...、できたと思って解答を見ると...
    たまに「答え省略、確かにできたぞという確信ががつかめたらそれで結構」だとか、「上の解には、ちょっとしたミスが2つある。それを発見したら次の問題へ」などという調子
    おかげでこれはかなり勉強した跡。
    新版になって、のちに廃盤。
    新品を1セット買っておけばよかった。
    これには当時衝撃を受け、のちに影響を受けました。
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     この問題集に影響された同世代の人たちと、ずっと後に出合ったことが少なくない。
     少しでも、そんな影響を与えられるように頑張ろう!

[巻頭言2012/10より] 試行錯誤の経験!!

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より

(2012年04月号)

試行錯誤の経験!!

 無事、春期講習が始まった。昨年は震災の影響を受けての新年度、そして春期講習。計画停電の対応に追われながらなんとかスケジュール通りに乗り切った。今年は、そんな心配をせずにスタートを切れたことに感謝。

 これから学校も新学期を迎える。新しい学校への進学、新学年への進級が待っている。未知なるものに挑戦するときだ。初めてのものへのチャレンジは誰でもドキドキする。どんなことが待っているか、期待に胸が膨らむ。その反面、結果が分からない不安も感じるだろう。失敗したらどうしようというマイナスの感情から、新しい一歩を踏み出すことに躊躇するかもしれない。

 それは、正解を選ばなければならないという強いプレッシャーが原因となっていることが多い。しかし、初めから正解が必要ではないのだ。試行錯誤しながら、成功にたどり着くまでのプロセスを体験することに意味がある。子どもたちの人生はまだ始まったばかり。将来の成功のために、今のうちに小さな失敗をたくさん経験してほしいと願う。そして保護者の皆さまも、長期的視点に立ち、結果の正否でなく、間違えても挑戦する気持ちを誉めることにフォーカスしてほしい。まだ新しい春が始まったばかり。

※この内容は2012/04塾だよりに掲載したものです。
 「試行錯誤」は「メタ認知」と関係が深いようである。
 最近の脳科学やAiからのアプローチで、Aiでは未だ実現できないヒトの能力「メタ認知」について少しずつ分かり始めているようだ。
 メタ認知とは、自分の思考や知覚を認知し、評価する能力のことである。例えば、ある事柄について自分は「わかっている」ということが「わかっている」能力、知っている「記憶している」ということを「記憶している」能力である。いわゆる「無知の知」なども代表であろうか。
 メタ認知の能力は脳の働きの中でも、より高度で複雑な働きに対して、大きな影響をもたらす。
 このメタ認知力を高めることに、試行錯誤しながらの学習が効果的なのかもしれない。若いうちにメタ認知を高めることは、瞬発的判断力や、抽象的な思考力などを高めるはずだ。
 新しい挑戦とともに、試行錯誤をたくさん体験してほしい。

 今年の夏も、そんな夏を実現したい。

※この2012年の卒業パーティーの写真より
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