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[巻頭言2012/03より] 挑戦 !!

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2012年03月号)

挑戦 !!

 新学期である。今年度から中学校と高校が新課程に変わる。教科書も今までより内容が増える。そして、難しさの上限が抑えられていたものが取り除かれる。今までよりは難しくなるが、実は、もともと昔より内容が減らされて簡単に易しくなっていたものが、元に少し戻るだけだ。いわゆる「ゆとり」路線からの回帰である。それに対して、内容が難しくなり「大変だ」という声が聞こえるが、はたしてそうだろうか。

 脳科学によれば、自分のできないこと、難しいこと、できないことに挑戦するときしか、大脳は活性化して働かないしくみらしい。そして試行錯誤の末、それができたときに初めて達成感が得られる。その達成感が次の挑戦するやる気を生み出す。易しいこと、すぐできることばかりやっていたのでは、脳は成長しない。脳科学的には、何がどこまでできるかは問題ではないだそうだ。その意味では、今回の改訂は、難しいことにチャレンジする機会を増やす。せっかくのチャンス、ぜひ悩み考えることで、脳を鍛えてほしい。

 そして、大人たちこそ、今まで得てきたできるもので満足するのではなく、自分のできないものに、積極的に挑戦しよう。大人の姿が素敵でないと、子供たちは未来を素敵に描けない。挑戦の一年の幕開けです。

※この内容は2012/03塾だよりに掲載したものです。
 脳は「怠け者」らしい。「自分では」「できない」こと、「難しい」ことに「意図的に」挑戦してできるようにしていくことで脳は活性化し、成長する。大人になるとだんだんこの挑戦が面倒になり、成長が停滞してしまう。さらに、年齢とともに徐々に認知症などの脳の問題が生じていく。
 この「難しい」がムズカシイ。難しさの絶対値ではない。他人と比べて、難しいことをやっているから、その人の脳はすごいとはならないのだそうだ。その人が「自分では」難しいことをやっているときしか脳は活性化しない。意識して、今できないことに、新しくチャレンジし続けていなければ、脳に刺激を与えられない。毎日の同じ行動の連続が、脳にとっては一番よろしくないということだ。
その習慣を変えるためには、環境を強制的に変化させるのがよいだろう。
 今日から夏期講習である。塾生たちが良い方向へ成長するために、環境を変える良い機会である。

 すべての塾生の「この夏」が、いつか「あの夏」と言ってもらえるように、スタッフ一同頑張ろう。

※ この年は春に東進の先生を招いての特別公開授業を連続で開催している。
写真は数学の志田先生と英語の今井先生。
コロナ禍で、しばらく特別公開授業もやっていない。再開できる日が待ち遠しい。

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[巻頭言2012/02より] 入試は団体戦!!

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2012年02月号)

入試は団体戦!!

 入試序盤戦が終了した。県内中学入試、県内私立高前期入試、大学入試センター試験が終了。これがお手元に届く頃には、都内中学入試と県内2次、私立高校後期入試、そして大学入試個別入試がスタートする時期だろう。

 今年も、塾生たちは健闘している。まだ十分に力を発揮できていない生徒もいるが、一番力が伸びるのは入試を受験している最中だ。厳しい経験を通して成長する。きっと最後まであきらめずに自分の力を伸ばして、自らの手で、成果を掴んでくれるものと期待している。

 去年も書いたが、入試は団体戦だ。諦めずにやり続ける意思、頑張る元気、気力を維持することは簡単ではない。心はあまり強くない。ひとりではなかなか頑張れない。頑張る仲間がいるからいつも近くにいるから、元気が出て、力も出る。自分たちと同じ努力をした仲間たちが、第一志望校に合格したという自信。そして合格しても、これからの入試に向かう友へ勇気を与えるためにまだ頑張る姿。ともに切磋琢磨してきた仲間たちと最後までお互いにエールを送りあうことで、お互いの力がより発揮できる。がんばれ受験生!

 さて、今年もやります! 千葉テレビ公立高校入試解答解説の番組をまた生放送で担当させていただくことになりました。少しでも受験生たちへの励みになるよう準備します。ご期待ください。

※この内容は2012/02塾だよりに掲載したものです。
 本題内容は、例によって、時期外れの内容である。
 ところで、この号の塾だよりには、危機管理の研修について掲載されていた。
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 以前、消防署の協力・指導の下、火災訓練・避難訓練などについて書いたことがあったが、このときは、警察署の協力・指導の下、危機管理の研修を行った。
 万が一の事態に備えて、さまざまな研修を行った。写真は、暴漢が侵入たときの対応。サスマタの使用方法のレクチャーと実演(さすがに10年前、仮想暴漢役が若い!(笑))。
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 大切な子供たちを預かる立場、想定される事態に対して、万全の対策を準備しています。今回のコロナ禍も、その日頃の準備や体制作りによって、素早い対応ができたと考えています。
 これからも、さらなるリスクが見つかれば、すぐに準備していきます。

[巻頭言2012/01より] 磁場!

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2012年01月号)

磁場!

 塾業界の会合はもちろんだが、異業種の方などが集まる経営者セミナーや勉強会にもよく参加する。規模の大きいものでは千名規模。年に一度は3千名が出席する会にも参加する。そのような会では、参加者同士の意気込み、志によって場の空気感が変わる。まるで一つの大きな磁場が働いている空間、瞬間を体験するようなときがある。

 入試が近づいてきた受験生たちが塾で必死に勉強しているときも、ひとり一人の頑張る気持ちが全体として大きな磁場となっている。個別指導の塾を経営している方々が(業界も注目するような個別指導塾の経営者たちだが)口をそろえて個別は伸びないという(もちろん大きな声で表だって発言はしませんが...)、最大の理由ではないだろうか。ひとり一人にカスタマイズして効率よく対策しているように見えるかもしれないが、問題を根本的に解決するのは、どう対処するかではなく本人が解決しようとする意気込みだ。そしてそれはともに同じ目標を目指す仲間たちと切磋琢磨することで磨かれる。

 ご家庭でも保護者自身が自ら何かにチャレンジする志をお持ちいただきたい。子供が、未来が素敵だと信じられるような磁場をともに作りましょう。

※この内容は2012/01塾だよりに掲載したものです。
 成果は、心×質×量で決まると考える。これは勉強だけでなく、人の為すあらゆる行為に対しての公式ではないだろうか。
 この中で心の成長を促すことが一番手間と時間がかかる。だが、一たび心が大きく伸びれば、成果は飛躍的に高まる。
 この心を磨くことに対して、集団による場の力が大きな力を呼ぶということかもしれない。一人では一人の成長の分しか伸びることができない。お互いによい影響を及ぼす集団の中では、一人の心の成長が周りの成長を促す。そしてその影響をうけて成長した周りから、逆に影響を受けかえして、また成長する。成長の連鎖反応が起きて、幾何級数的に増大するということなのだろう。
 子供たちが切磋琢磨することで、よい成長を促す強い「磁場」が作れるように、その磁場を作るスタッフたちが強い信念で仕事に向き合えるような「磁場」をつくることが使命と考える。
 夏期講習直前だ。今年の夏が熱い夏となるように、頑張ります。

[巻頭言2011/12より] 挑戦は、いつからでも

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2011年12月号)

決断!

 お恥ずかしい話なのだが、学生時代にサボったツケがまだまだたくさんある。もちろん遠回りした分だけ別の経験となり、それが結局は今に活きて繋がっているので後悔ばかりではないのだが...。

 大学で学んだ数学や物理の中で、理解を伴わずに、とりあえず単位をとるためだけで通過してしまったものはとくにすっきりしない。心残りのものが少なくない。つい先日のこと、ちょっと前に気になって購入した物理数学の本を寝る前に手に取ってみた。すると、パラパラと数ページ読み進んだだけなのだが、長年のもやもやの向こうにあったものが、はっきりと姿を見せた。数式の背後にあった感覚的な理解がつかめた瞬間! なんだそういうことだったのか。それを早く言ってくれ、とスッキリ爽快感。

 挑戦は、いつからでもできる。Samuel Ullmanの「青春とは人生の一時期のことではなく心のあり方のことだ」の一節で始まる「青春」という詩を連想した。

 保護者の皆様も、子供たちに諦めずに挑戦する勇気を、身を持って示していただきたいと願う。

※この内容は2011/12塾だよりに掲載したものです。
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 という式である。
 11年前のある日のできごとだ。
 このときの話は、このあと何度かあちこちで書いたり、話したりしたことがある。それだけ強烈な記憶に残った。
 ベクトル解析という分野の中の基本的な式だった。他の式(演算子といってdivやgradや∇(ナブラ)などが出てくる)はなんとかわかった(つもりだった)が、この式だけ物理的なイメージが掴めない。真ん中のマイナスがとくに曲者で、その根本的な意味を理解できなかった。もちろん授業に出て、真面目に勉強していればわかったのかもしれない。周りの友人たちに聞いたが、少なくとも彼らもわかってなかっただけでなく、そこはいいからさっさと勉強して単位とろうぜなどと忠告された(苦笑;)。結局諦めて、そのまま単位を取るため試験勉強だけとなり、幸い再履修にならない程度の点数だったのだろう。そのまま過ぎ去って忘れてしまっていた記憶。
 数十年のときを経て、たまたま立ち寄った神保町三省堂書店本店。上から下まで、隈なく見て歩いていたときに、2011年9月21日発刊とあるので、その直後だったのだろう。平積みされていた「物理数学の直観的方法―理工系で学ぶ数学「難所突破」の特効薬〈普及版〉(長沼伸一郎著)」というブルーバックスに出会った。
 そのまま積んでおいた数日後、何気なくパラパラみていて、このときの記憶がよみがえり、数ページ読んだだけで氷解した。なんだ、そういう意味だったのかと。このときに感じた爽快感こそ「わかった」の瞬間。学びの楽しさの本質ではないかと考える。
 そんな体験を子供たちに伝えていきたいと願う。
 頑張ります。

 ※この話は、あちこちで話してきているが、今まで、この式の中身にまで続けて聞かれたことがないのが残念...。
 興味が湧いた方は、以下の本をお読みください。
 (ただし理工系出身で、分からなかったままにしたという体験者しかわからないかもしれません。また、最近の大学の教科書は昔と違って、わかりやすいものがいろいろ工夫してでているようです。)

[巻頭言2022/06より] 感謝の気持ちで

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2022年06月号)

感謝の気持ちで

 ネガティビティバイアス(またはネガティブバイアス)という言葉をご存じだろうか。脳に対して、否定的なマイナスの情報と、肯定的なプラスの情報を与えた場合、マイナスからの影響をより強く受ける人が多いのだそうだ。そして一度どちらかの影響を受けた状態になると、同じ種類の情報により敏感に反応するようになるという。つまり始めから負の情報に反応する率が高いので、それがそのまま偏って蓄積していきやすいということになる。また先に良い情報を与え、あとから悪い情報を与えた場合と、悪い情報を与えてから良い情報を与えた場合を比較すると、どちらも悪い情報に対して、より強く反応することもわかっているそうだ。悪い噂ほど広まりやすいと言われることなどや、子供に対して、良いところよりも、悪いところが目につき、つい過剰に反応するというのも、その例だろう。

 これは脳の中心付近にある偏桃体という部分が関与して、もともとは危険な状態に強く反応して回避することで生存確率を上げるために発達したのだそうだ。

 研究によると、ネガティブな感情が偏桃体を活動させて、脳にブレーキをかけることもわかっている。「否定語は使わない」という話を、この巻頭言で繰り返し取り上げてきたが、そこにも通じるのだろう。

 これ対して、意識的なポジティブシンキングが有効であると言われている。ただし、いわゆる楽観主義と混同してはならない。「このままでもなんとかなるだろう」という楽観的な意識では脳は行動を選択しない。「自分で頑張れば、なんとかなるはずだ」という意識をもつことがネガティビティバイアスを抑制する。

 そして感謝の気持ちを持つことも大きな効用があるそうだ。確かに謙虚に感謝することで、他者への負の感情を抑えるというのは納得できるだろう。ということで、いつもこの巻頭言をお読みいただきありがとうございます。頑張ります。

※この内容は2022/06塾だよりに掲載したものです。
 脳科学に基づく話は、このコラムでも繰り返し取り上げてきた。また「否定語は使わない」という話も同様である。
 後半のポジティブシンキングや楽観主義の話について、考えてみよう。
 いわゆる悲観主義のよくない点を集約すると、「自分で頑張って(行動して)も」⇒「駄目だろう」というところであろう。これでは「行動」する意欲を生み出されないことは言うまでもない。
 それに対して、ポジティブシンキングがよく機能するのは、「自分が頑張れば」「よい結果になるだろう」という「自己有用感」が自発的「行動」を促すからだ。似て非なる、いわゆる楽観主義のマイナスは、「自分で行動しなくても」「なんとかなるだろう」という、他力本願な考え方に支配されて「行動」する意欲を生み出さないから、と整理すればわかりやすいかもしれない。
 保護者や指導者は、これらを正しく理解して子供に接する必要がある。ただ、子供には「理屈」だけを言っても簡単には伝わらない。正面から正論を伝えるためには、その前にたくさんの努力が必要だ。
 そして、保護者にしかできないこと、指導者にしかできないことの違いも存在する。指導する者が、その力を十分に発揮するためには、保護者の理解と協力が欠かせない。スタッフたちが、指導者として傲慢に陥ること、感謝を忘れずに指導していくよう導いていきたい。
 ということで、いつものこのコラムをお読みいただきありがとうございます。

[巻頭言2011/11より] 決断!

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2011年11月号)

決断!

 中3の受験面談のピークの時期だ。高校部でも高1・2の三者面談が始まっている。面談で重要視しているのは本人が自分自身で考えて決めること。保護者の皆様には、その本人の決断のときに、そばでそっと付き添っていただくように、ご協力いただいている。

 成果を達成するには、行動しなければならない。そしてその行動を始めるためには、決意する、自己決定感が重要だ。やる気と自己決定感には大きな相関関係があるといわれている。いつまでに何をどれからどのようにやるのかを、本人が主体性をもって決めることが、やる気を生み出す。ああしろ、こうしろと命令されると、自ら決める余地がない。決められてしまい自己選択感がないと、やらされているという強制感を感じてやる気を失ってしまう。

 できるだけ失敗させまいと、横から最短距離を指示してしまうことが結果としてやる気を奪うことになる。本人の試行錯誤の余地がなければ、やる気は生まれない。決断するのは本人。決断するという行為が完了することで、意思が生まれる。そしてその決断する機会を増やすことだけなら、周りの力でもできる。保護者の皆様の理解と協力が欠かせない。

※この内容は2011/11塾だよりに掲載したものです。
 「自己選択感」「自己決定感」は、やる気を持続するための重要なキーワードである。自発的なやる気を持続し続けるには、内発的動機がカギということだ。
 指導する側、もしくは親が、早急に結果を求めようとすると、強制的に勉強させようしてしまう。この短絡的な選択は、一時的、短期的な効果しか得られない。いやいややらされていることは、脳が常に早く拒否しようとするからだ。
 小学生の間はそれでも大人と子供の力関係で続くことがあるかもしれないが、中学入試で、誤って過度な圧力をかけた状態が続くと、ストレスで様々な悪影響がでることが少なくない。また、中学生後半になると反抗期がピークになり親子の衝突が起こる。
ありがちな、目の前の成果だけを求めるスタイルの塾で行われている指導では、結局、一時的な効果は、長く続かないだけでなく、長期的に見れば大きなマイナスになるのだ。
 それに対して長期的な展望をもち、成長を促すことは非常に手間がかかり遠回りに見えることが多い。だが、その漢方薬的な処方箋が、時間をかけ続けていると、どこからで大きな突破力を生みだし、飛躍的な成果になる。
 私たちは小中高と一貫した教育の現場で、それを実感し、常に改善改良を続けてよりよい方法論を求め続けてきた。まだ究めるには道は遠く険しいが、挑戦し続けていくつもりである。

[巻頭言2011/10より] 30周年、ありがとうございました。

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2011年10月号)

勉強は誰のため?

 「勉強しないと将来困ったことになるわよ」と子供に、勉強を否定的な言葉で語っていないだろうか。否定的な言葉は、やらなければならないという難行苦行の気持ちが刷り込まれ、やる気を奪い取ることになる。大人の言葉の細部に子供は大きく影響を受ける。

 「将来、自分のためになるから勉強しなさい」、これもダメだ。まず命令形は、子供のやる気を奪い取る。そして「自分のため」というが一番いけない。本質的には勉強を損得で語っていることになる。大人たちは子供に利己心から行動してはいけないと小さい時から教えてきたではないか。

 誰のために勉強するのか? 答えは「他人のため」である。人はそれぞれ、世のため人のために果たすべき使命を持っている。誰かのために自分の役割を果たすことで、社会から必要な人として自分の存在が認められる。利他の心が、充実した幸せな人生を創り出す。そして、まだその力を発揮するには十分に能力が磨かれていないので、勉強によってその力を磨くのだ。

 必ず、将来の自分の使命を果たす日が来る。その素晴らしい未来が待っていると子供に教えることは、大人の使命である。

※この内容は2011/10塾だよりに掲載したものです。
 脳科学については、このブログでも繰り返し書いてきた。この号の巻頭言では、その中でも教育に関する重要な2つの点に触れている。
 「否定語は脳にブレーキ」をかける。これは脳科学では、実験で繰り返し実証されている重要な事実。ただし、どんな言葉が否定語に働くかは、正確には、実は微妙な要素があるのだそうだが、細かいことを知らなくても、否定語を子供に向けてはいけないことを知っているだけでも、大きな効果がある。
 さらに二つ目の「利他の心」。どんな言葉が脳に影響を与えモチベーションを持続するかの実験により、確かめられているという。自分の「損得」で判断するのではなく、他人への「善悪」を判断の基準とすると言い換えるとわかりやすいだろう。
子供たちには、若き日には、天命をまだ知らずとも、そのときのために、勉強によって、若き自分を磨くと考えられるようになってほしいと願う。
 その子供たちのために、頑張ります!

[巻頭言2011/09より] 未知との出会い

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2011年09月号)

未知との出会い

 受験生以外の学年では、お盆休みなどに旅行されたご家庭も多いだろう。休みを利用して今年は国内でも少し遠くまで足を伸ばした。見知らぬ地の旅。見るもの、触れるもの、そして話す人々、未知なるものには大きな刺激がある。新しいものに出会い、体験すること自体の楽しみがある。

 学びの本質も全く同じだ。それまでの自分の中にない知識やモノの見方、考え方に出会い、それを理解することで刺激を受ける。新たなことを知ること自体の知的な楽しみがそこにある。わからないこと、できないことにぶつかっても、すぐにあきらめてはいけない。わからないこと、できないことは、その先のより大きな知的な刺激と達成を得るための、大きなチャンスなのだ。そしてその知的な達成体験が、次の知的好奇心、すなわちやる気を生み出す。

 この秋、単に成績という成果だけを求めるではなく、知的な好奇心を刺激するような未知なるものとたくさん出会ってほしい。知らないから面白い。難しいから楽しいのだ。

 夏期講習の密度の濃い学習を終え、後期がスタート。いよいよ実りの秋を迎える。知的な、充実したときを過ごしてほしい。

※この内容は2011/09塾だよりに掲載したものです。
 コロナ禍で、子供たちは日常的に行動にかなり制限を受けてきたはずだ。学校生活、部活、修学旅行やさまざまな行事など。そして学外の行動や家庭での環境も大きな影響を受けた。
 この巻頭言で述べた「未知なるものと出会う体験」の機会が大きく失われたかもしれない。これは、学びの本質、脳科学的な脳の成長に対して、長期的に見れば大きなマイナス要因になるであろう。
過ぎた時間は取り戻せない。まだ完全に自由には行動できない制約はあるが、その中でも工夫できる余地はあるはずだ。
 今年も、夏期講習が近づいてきた。
 徐々に平時に戻りつつはあるが、まだまだ直接体験できないものも少なくない。その中で、勉強を通して、少しでも未知なるものとの出会い、そして、そもそもの未知なるものへの好奇心を増幅する機会を増やせるように、ご家庭とともに進んでいきたい。

[巻頭言2011/08より] 凡事徹底

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2011年08月号)

凡事徹底

 まるで節電のためのように気温の低い日が続いた。誉田進学塾グループでは勉強の環境はできるだけ落とすことなく、他の部分で節電に努力している。

 自分の力でコントロールできることだけ集中して、そのかわり徹底してやり続けること、これが一番大切なこと。勉強も同じだ。受験生の演習テストの目的はそこにある。限界まで毎日努力し続けることで突破口が開くのだ。

 帝国ホテルの名物シェフだったムッシュこと故村上信夫さんが帝国ホテルに入社したての若き日。来る日も来る日も鍋洗いばかりさせられたという。せめて鍋の底に残ったソースの味を盗んでやろうと思っても、先輩たちが味を盗まれないようにゴミや石鹸水を投げ込んで洗い場に回してくる。同僚たちが、修行なんかできないじゃないかと愚痴をいう横で、ムッシュは休憩時間もひたすら必死に鍋を磨き続けたそうだ。何カ月後、ホテル中の物凄い数ある鍋がピカピカになっていき、誰が見てもはっきり分かるほどになった。するとムッシュの目の前にソースが残った鍋が...。チャンスを自ら拓いた。

 凡事徹底。さあ、自らの努力で、自らの力を必死に磨こう!

※この内容は2011/08塾だよりに掲載したものです。
 この号に「中国からお客様がいらっしゃいました!」というタイトルの記事が掲載されている。以下の内容。

 スキルアップのためには、授業研修など塾内での研修だけでなく、外へ出ることも大切です。誉田進学塾のスタッフも外部の研修へ参加したり、全国の塾を見学しに行ったりしていますが、今回はお客様をお迎えする側になりました。
 今回いらっしゃったのは中国から、子どもへの民間教育として、英語スクールを中心にさまざまな教育事業を展開している教育視察団の皆様です。
 鎌取教室にて誉田進学塾のプロフィールなどをお話しした後、県立千葉中受検対策特別講座TOPを見学。その後は、高校部土気駅北口校へ移動し、昼食を交えて意見交換。生徒の様子や、塾設立についてなどたくさんの質問を受けました。
 本当に熱心な方たちばかり。私たちも大いに刺激を受ける貴重な時間となりました。
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 そのときのディスカッションの中で「日本は平均的レベルを上げる教育に優れているのでそれを見習いたい。それに対し中国はトップレベルを上げる教育はス優れている」という話がでて、大いに刺激を受けたことを覚えている。
 今、ご存じの通り、中国の学習塾は、当局からの厳しい規制で、危機的な環境にあるようだ。
 日本では、そのようなことにならないと甘えてはいけない。真の意味で世の中から求めらる存在になるよう努力し続けなければならない。
 肝に銘じ、凡事徹底で臨みたい。
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[巻頭言2022/05より] 入試問題の楽しさとは

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2022年05月号)

入試問題の楽しさとは

 前号で、高校時代の先生の書かれた数学の参考書の話を書いた。その後日談。

 入試時期のいろいろと忙しい合間に、今年の東大京大などの数学の入試問題のうち、興味をそそられた問題を解いてみた。その中で京大の入試問題がなんだか「楽しい」。調子に乗って文理ほとんど解いてみた。この「楽しい」とは何か。

 調子よく解けたのは、たまたま、いつか近いうちに先生の参考書を再度印刷して同級生に配ろうかと、この直前に、原稿の誤記確認のために数十問すべてを解いたからだ。解答方略を考える、解法を閃くために書かれたものなので、閃いたあとの解法自体の解説や、途中式などはほとんどが省略されている。その解答や途中式を校正するためには自力(公式や技法は少々忘れていて、なるべくは自力で復元したが、一部ちらっとカンニング(苦笑))で解いて確かめるしかなかったので、ちょうど程よく調子が上がっていて、気分よく解けたからもあるだろう。

 だが、それよりも出題で問われていたものが何か、であると考える。先日発刊の「月刊大学への数学」の「今年の入試特集」によれば、今年の京大は「一部を除くと、どこかで見たような問題も、誰もが諦めてしまう難問もなく」と評されている。つまり、パターン学習によって、見ただけであれかと知っているような解法を問う問題ではなく、また、簡単に解けなくするために、ただ力ずくで難しくしただけの問題でもない、ということだ。未知であり、かつ見かけは比較的シンプル、どう解けばよいかは見ただけでは見通せないが、なんとなく解けそうにも見える問題。そして、いろいろと試行しているうちに、あっと「閃く」とすっきりする問題(最近の京大は先が見えるとあとは「やや易」が特徴かも)。この、自分で解き方を発見する快感が「楽しい」の正体だ。なかなかその楽しさを伝え、体験させるのは難しいものがある。それでも敢えて挑戦していく道を志したい。

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※この内容は2022/05塾だよりに掲載したものです。
 東進では「同日体験模試」というのを開催している。入試と同じ問題を高2や高1が同じ日に体験するというもの。もちろん同じ時刻に実施することは不可能なので、問題が公開されてから数時間遅れでの開催。東進本部から入手直後に来る問題や解答用紙を校舎で準備して実施する。「共通テスト」のときは、ほぼ全員が受験する大規模なものなので、相当タイトな時間での運営となり、厳しいスケジュール管理の下で実施している。
 東大などの難関国立大学も同日試験を開催しているが、それ以外も解答速報が毎日のように上がってくる。
そんな入試時期の入試問題を見ていての巻頭言が上の話だった。
 未知の問題に対して、解答方略を見つけ出すまでの思考方法と、そこから先の問題解法とは次元が異なる。後者を教えるのは容易く、どこの塾や参考書、問題集でもできる。どんなに難しい問題でも、簡単に詰め込んでしまうことが可能であろう。
 それに対して、前者をどう伸ばすかは非常に難しい。いわゆるパターン暗記で詰め込むことはできない。だからこそ大きな差がつくところ。
 しかし、その解法を見つけ出すまでの「頭の使い方」は、不変性をもつはずだ。将来、向かい合う課題を解決するときに応用ができる。本質的な意味で数学を勉強することは、頭をよくすることに通じる。
 私たちの塾は、その「閃き」をどう引き出すかを、科学的アプローチとして長年技術開発してきたといってもいいかもしれない。そしてその道はまだまだ限りなく遠い。
 まだまだこれから!頑張ります!

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