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[巻頭言2011/10より] 30周年、ありがとうございました。

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2011年10月号)

勉強は誰のため?

 「勉強しないと将来困ったことになるわよ」と子供に、勉強を否定的な言葉で語っていないだろうか。否定的な言葉は、やらなければならないという難行苦行の気持ちが刷り込まれ、やる気を奪い取ることになる。大人の言葉の細部に子供は大きく影響を受ける。

 「将来、自分のためになるから勉強しなさい」、これもダメだ。まず命令形は、子供のやる気を奪い取る。そして「自分のため」というが一番いけない。本質的には勉強を損得で語っていることになる。大人たちは子供に利己心から行動してはいけないと小さい時から教えてきたではないか。

 誰のために勉強するのか? 答えは「他人のため」である。人はそれぞれ、世のため人のために果たすべき使命を持っている。誰かのために自分の役割を果たすことで、社会から必要な人として自分の存在が認められる。利他の心が、充実した幸せな人生を創り出す。そして、まだその力を発揮するには十分に能力が磨かれていないので、勉強によってその力を磨くのだ。

 必ず、将来の自分の使命を果たす日が来る。その素晴らしい未来が待っていると子供に教えることは、大人の使命である。

※この内容は2011/10塾だよりに掲載したものです。
 脳科学については、このブログでも繰り返し書いてきた。この号の巻頭言では、その中でも教育に関する重要な2つの点に触れている。
 「否定語は脳にブレーキ」をかける。これは脳科学では、実験で繰り返し実証されている重要な事実。ただし、どんな言葉が否定語に働くかは、正確には、実は微妙な要素があるのだそうだが、細かいことを知らなくても、否定語を子供に向けてはいけないことを知っているだけでも、大きな効果がある。
 さらに二つ目の「利他の心」。どんな言葉が脳に影響を与えモチベーションを持続するかの実験により、確かめられているという。自分の「損得」で判断するのではなく、他人への「善悪」を判断の基準とすると言い換えるとわかりやすいだろう。
子供たちには、若き日には、天命をまだ知らずとも、そのときのために、勉強によって、若き自分を磨くと考えられるようになってほしいと願う。
 その子供たちのために、頑張ります!

[巻頭言2011/09より] 未知との出会い

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2011年09月号)

未知との出会い

 受験生以外の学年では、お盆休みなどに旅行されたご家庭も多いだろう。休みを利用して今年は国内でも少し遠くまで足を伸ばした。見知らぬ地の旅。見るもの、触れるもの、そして話す人々、未知なるものには大きな刺激がある。新しいものに出会い、体験すること自体の楽しみがある。

 学びの本質も全く同じだ。それまでの自分の中にない知識やモノの見方、考え方に出会い、それを理解することで刺激を受ける。新たなことを知ること自体の知的な楽しみがそこにある。わからないこと、できないことにぶつかっても、すぐにあきらめてはいけない。わからないこと、できないことは、その先のより大きな知的な刺激と達成を得るための、大きなチャンスなのだ。そしてその知的な達成体験が、次の知的好奇心、すなわちやる気を生み出す。

 この秋、単に成績という成果だけを求めるではなく、知的な好奇心を刺激するような未知なるものとたくさん出会ってほしい。知らないから面白い。難しいから楽しいのだ。

 夏期講習の密度の濃い学習を終え、後期がスタート。いよいよ実りの秋を迎える。知的な、充実したときを過ごしてほしい。

※この内容は2011/09塾だよりに掲載したものです。
 コロナ禍で、子供たちは日常的に行動にかなり制限を受けてきたはずだ。学校生活、部活、修学旅行やさまざまな行事など。そして学外の行動や家庭での環境も大きな影響を受けた。
 この巻頭言で述べた「未知なるものと出会う体験」の機会が大きく失われたかもしれない。これは、学びの本質、脳科学的な脳の成長に対して、長期的に見れば大きなマイナス要因になるであろう。
過ぎた時間は取り戻せない。まだ完全に自由には行動できない制約はあるが、その中でも工夫できる余地はあるはずだ。
 今年も、夏期講習が近づいてきた。
 徐々に平時に戻りつつはあるが、まだまだ直接体験できないものも少なくない。その中で、勉強を通して、少しでも未知なるものとの出会い、そして、そもそもの未知なるものへの好奇心を増幅する機会を増やせるように、ご家庭とともに進んでいきたい。

[巻頭言2011/08より] 凡事徹底

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2011年08月号)

凡事徹底

 まるで節電のためのように気温の低い日が続いた。誉田進学塾グループでは勉強の環境はできるだけ落とすことなく、他の部分で節電に努力している。

 自分の力でコントロールできることだけ集中して、そのかわり徹底してやり続けること、これが一番大切なこと。勉強も同じだ。受験生の演習テストの目的はそこにある。限界まで毎日努力し続けることで突破口が開くのだ。

 帝国ホテルの名物シェフだったムッシュこと故村上信夫さんが帝国ホテルに入社したての若き日。来る日も来る日も鍋洗いばかりさせられたという。せめて鍋の底に残ったソースの味を盗んでやろうと思っても、先輩たちが味を盗まれないようにゴミや石鹸水を投げ込んで洗い場に回してくる。同僚たちが、修行なんかできないじゃないかと愚痴をいう横で、ムッシュは休憩時間もひたすら必死に鍋を磨き続けたそうだ。何カ月後、ホテル中の物凄い数ある鍋がピカピカになっていき、誰が見てもはっきり分かるほどになった。するとムッシュの目の前にソースが残った鍋が...。チャンスを自ら拓いた。

 凡事徹底。さあ、自らの努力で、自らの力を必死に磨こう!

※この内容は2011/08塾だよりに掲載したものです。
 この号に「中国からお客様がいらっしゃいました!」というタイトルの記事が掲載されている。以下の内容。

 スキルアップのためには、授業研修など塾内での研修だけでなく、外へ出ることも大切です。誉田進学塾のスタッフも外部の研修へ参加したり、全国の塾を見学しに行ったりしていますが、今回はお客様をお迎えする側になりました。
 今回いらっしゃったのは中国から、子どもへの民間教育として、英語スクールを中心にさまざまな教育事業を展開している教育視察団の皆様です。
 鎌取教室にて誉田進学塾のプロフィールなどをお話しした後、県立千葉中受検対策特別講座TOPを見学。その後は、高校部土気駅北口校へ移動し、昼食を交えて意見交換。生徒の様子や、塾設立についてなどたくさんの質問を受けました。
 本当に熱心な方たちばかり。私たちも大いに刺激を受ける貴重な時間となりました。
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 そのときのディスカッションの中で「日本は平均的レベルを上げる教育に優れているのでそれを見習いたい。それに対し中国はトップレベルを上げる教育はス優れている」という話がでて、大いに刺激を受けたことを覚えている。
 今、ご存じの通り、中国の学習塾は、当局からの厳しい規制で、危機的な環境にあるようだ。
 日本では、そのようなことにならないと甘えてはいけない。真の意味で世の中から求めらる存在になるよう努力し続けなければならない。
 肝に銘じ、凡事徹底で臨みたい。
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[巻頭言2022/05より] 入試問題の楽しさとは

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2022年05月号)

入試問題の楽しさとは

 前号で、高校時代の先生の書かれた数学の参考書の話を書いた。その後日談。

 入試時期のいろいろと忙しい合間に、今年の東大京大などの数学の入試問題のうち、興味をそそられた問題を解いてみた。その中で京大の入試問題がなんだか「楽しい」。調子に乗って文理ほとんど解いてみた。この「楽しい」とは何か。

 調子よく解けたのは、たまたま、いつか近いうちに先生の参考書を再度印刷して同級生に配ろうかと、この直前に、原稿の誤記確認のために数十問すべてを解いたからだ。解答方略を考える、解法を閃くために書かれたものなので、閃いたあとの解法自体の解説や、途中式などはほとんどが省略されている。その解答や途中式を校正するためには自力(公式や技法は少々忘れていて、なるべくは自力で復元したが、一部ちらっとカンニング(苦笑))で解いて確かめるしかなかったので、ちょうど程よく調子が上がっていて、気分よく解けたからもあるだろう。

 だが、それよりも出題で問われていたものが何か、であると考える。先日発刊の「月刊大学への数学」の「今年の入試特集」によれば、今年の京大は「一部を除くと、どこかで見たような問題も、誰もが諦めてしまう難問もなく」と評されている。つまり、パターン学習によって、見ただけであれかと知っているような解法を問う問題ではなく、また、簡単に解けなくするために、ただ力ずくで難しくしただけの問題でもない、ということだ。未知であり、かつ見かけは比較的シンプル、どう解けばよいかは見ただけでは見通せないが、なんとなく解けそうにも見える問題。そして、いろいろと試行しているうちに、あっと「閃く」とすっきりする問題(最近の京大は先が見えるとあとは「やや易」が特徴かも)。この、自分で解き方を発見する快感が「楽しい」の正体だ。なかなかその楽しさを伝え、体験させるのは難しいものがある。それでも敢えて挑戦していく道を志したい。

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※この内容は2022/05塾だよりに掲載したものです。
 東進では「同日体験模試」というのを開催している。入試と同じ問題を高2や高1が同じ日に体験するというもの。もちろん同じ時刻に実施することは不可能なので、問題が公開されてから数時間遅れでの開催。東進本部から入手直後に来る問題や解答用紙を校舎で準備して実施する。「共通テスト」のときは、ほぼ全員が受験する大規模なものなので、相当タイトな時間での運営となり、厳しいスケジュール管理の下で実施している。
 東大などの難関国立大学も同日試験を開催しているが、それ以外も解答速報が毎日のように上がってくる。
そんな入試時期の入試問題を見ていての巻頭言が上の話だった。
 未知の問題に対して、解答方略を見つけ出すまでの思考方法と、そこから先の問題解法とは次元が異なる。後者を教えるのは容易く、どこの塾や参考書、問題集でもできる。どんなに難しい問題でも、簡単に詰め込んでしまうことが可能であろう。
 それに対して、前者をどう伸ばすかは非常に難しい。いわゆるパターン暗記で詰め込むことはできない。だからこそ大きな差がつくところ。
 しかし、その解法を見つけ出すまでの「頭の使い方」は、不変性をもつはずだ。将来、向かい合う課題を解決するときに応用ができる。本質的な意味で数学を勉強することは、頭をよくすることに通じる。
 私たちの塾は、その「閃き」をどう引き出すかを、科学的アプローチとして長年技術開発してきたといってもいいかもしれない。そしてその道はまだまだ限りなく遠い。
 まだまだこれから!頑張ります!

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[巻頭言2011/07より] 壁を登れ

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2011年07月号)

壁を登れ

 ようやく難関高校受験研究会Advanced Programがすべて終了した。

 今年もたくさんの保護者の皆様にご参加いただきました。とても熱心にお聞きいただき、こちらも熱が入り時間延長してしまいました。感謝です。ありがとうございました。この保護者対象の会は、毎年、学年別に成長の時期に合わせてのお話をさせていただいています。ぜひ毎年ご参加ください。

 子供の成長には壁が必要だ。壁は高すぎても低すぎてもだめ。低い壁では新しいチャレンジをせずに登れてしまう。高すぎる壁では、初めから無理と努力する意欲を失う。目標は、なんとか頑張れば届くというところのちょっとだけ先に設定することが大切。一段一段届く限界にチャレンジして登り続ける。それを繰り返していくうちに、限界そのものも高いところになる。けっして初めから用意された、効率よい簡単な壁のない道にしてはいけない。それでは自分自身を変革する必要性すらないからだ。

 成長とはどこまで登ったかではなく、登るために十分な自分自身に、どこまで磨いたかである。この夏期講習はそんな自分を磨く壁にしたい。

※この内容は2011/07塾だよりに掲載したものです。
 少々本題とは離れて、塾だよりの内容から、少し珍しいものがあったのでご紹介。
 避難訓練実施の報告記事が掲載されている。
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東日本大震災の年なので、実施した。それまでも、きちんと消防署の指導で避難計画を立てていたが、震災を契機に、実際に塾生参加の訓練を実施した。その後、さまざまな経験値を積みあげ、現在は、塾生が参加する形式のものは実施していないが、訓練自体は定期的に訓練はしている。
 万全の体制が重要と考えています。
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[巻頭言2022/04より] 学ぶことを好きになってほしい

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2022年04月号)

学ぶことを好きになってほしい!

 (業界誌のインタビューの一部だが、少し書き加えてここにも掲載しておきたい)
 昨年末、高校時代の担任の先生が亡くなられた。享年90歳。数学を担当し、強い言葉やきつく叱ることが全くない、穏やかな話し方の先生で、のちに予備校でも教鞭を執られた。熱血教師、凄腕の先生というわけではなく、印象深いエピソードがあったわけでもないはずだが、後になり、毎年お招きするクラス会で、みんなから慕われている姿を見て、これが先生のありがたさなのだと気づいた。

 引退されて随分経った頃、ご自身でコツコツとまとめられた数十ページに及ぶ参考書の草稿をお預かりした。クラス会幹事を引き受けていたからだが、仕事柄、意見を求められたのかもしれない。恐れ多くて、のちにワープロ原稿をそのまま印刷し同級生に配布するに止めた。読み返すと、いわゆる解法の解説ではなく、考える力がつくようにと大変工夫されていた。解法方略をどう見つけ、解答へとたどり着けばよいかを、入試問題を題材に一般化しようと試みていて、良問として選ばれていたのは、東大・京大・東工大・一橋・早稲田理工限定(全部解きました)で、当時の3年間分。あとがきには、翌年の入試が出たら差し替えるとの熱意が書かれ、最後に「みんな数学が好きになってほしい!」と結ばれていた。

 これこそが、たくさんの先生たちが作ってきた教育の歴史だと思う。

 私たちが仕事で携わる受験は時に難行苦行に例えられ、目的達成のために、苦しくても耐えるべきものと扱われがちだ。しかし、それではいけない。学ぶことが好きだという気持ちを失わないように、むしろ受験を通してこそわかる学ぶ楽しさを次世代に伝えていくことと、成績向上や志望校合格を両立させることこそが私たちの使命であると考える。未知のことを知る瞬間の楽しさ、わかった! できた! という喜び、その学びの原点の追求を目指し頑張る決意だ。

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※この内容は2022/04塾だよりに掲載したものです。
 いただいた参考書冒頭の「はしがき」には、「「数学の問題は考えて解く」ことを知ってもらうのが、この本のねらいですから、気楽な読み物として読んでもらえるように」と書かれていて、「考える学習で楽しさと自信が育つことを願っています」と結ばれている。先生は、数学の受験問題を使って「考えること」の楽しさを伝えたかったに違いない。「ひらめきとか天才とか言う」「特別の才能が必要」ではないとも書かれている。誰でも「自然の心の働き」を使って考えることで、このわかったという楽しい瞬間を感じることができるはずだと信じていらっしゃったのであろう。
 まだまだ追求する先は遠くまで続く。頑張ります。

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[巻頭言2011/06より] ピンチこそがチャンス

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2011年06月号)

ピンチこそがチャンス

 教室によって外に花を植えている。塾生だけでなく、道を通る人たちにも楽しんでもらおうと、よく見えるようにしている。季節に応じて毎年、夏用と冬用を入れ替えている。今年も夏に向けて花を植え替えたところだ。この夏は、暑さに備えてゴーヤのカーテンもチャレンジしてみたところもある。

 この花やゴーヤ、植えたらすぐに先端を切って詰める。すると切った脇から新しい芽が出て枝が増えて立派になる。また実をつけるものは別だが、花を楽しむだけのものは咲き終わった花はすぐに取る。すると次々とつぼみが成長して上がってくる。どちらも植物にとっては一種の逆境である。しかしその逆境が、結果的に生命力を強く発揮させることになり、成長を促す。

 子供の成長も同じようなところがあるかもしれない。順調にすくすくと伸びることもあるが、壁にぶつかり伸び悩み、停滞しているように見える時期もある。この簡単に乗り越えにくい新しい壁にぶつかることこそが次の成長を生み出す。壁を越えるためにエネルギーを充電し、目に見えない自己変革をしているときなのだ。壁にぶつかることは悪くない。チャンスなのだから。

※この内容は2011/06塾だよりに掲載したものです。
 「植物も育てられないのに、教育ができるわけがない」と、植物を例にだしてスタッフを諭すことがある。もちろん、植物を育てる方が簡単だというわけではない。
 「育てる」という意味では共通することが少なくない。子供なら言って聞かせれば、思う通りになるという傲慢な過信をしてはいけない。子供は、適切な環境を与え、自ら考え行動させることで、自ら育つものである。誰かに育ててもらわなければ育たない存在にしてしまってはいけないはずだ。
 植物は、日光と水と適切な環境条件を与えれば、自ら育つ。まさか植物に言って聞かせて育てようと考えることはあるまい。
 また「農家は毎年が一年生」という言葉があると、農業を営む方から聞いた。農業は、一度うまくいくと、それに慣れて同じことをやればよいというような単純なものではないという意味だ。毎年毎年、天候などの外的条件が変わり、それに向かい合い続けなければうまくいかないということだそうだ。単なる経験則ではなく、いわゆる科学的アプローチを繰り返していかなければ前進しないという。
 教育と通じるものがある。
 すべてを厳しく見つめて前進していきたい。

[巻頭言2022/03より] 考える力の養成のカギ

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2022年03月号)

考える力の養成のカギ

 2回目となった大学入試共通テストは、大方の予想通り難化した。ご存じの通り、とくに数学の平均点が大きく下がった。一部に、数学の前提になる「読解力」に問題があるとの指摘も目立つが、はたしてそうだろうか。どうも未知の問題に初めて立ち向かうという受験生同様の「場」に自分を置いて解いていない人の指摘であるように感じる。問題解法が理解できるかと、入試で力が発揮できるかでは、いわゆるメンタル面の影響だけではなく、大きく異なる要素がある。

 優れた音楽演奏家と中・初級者の練習の際の違いについての心理学の科学的研究は少なくないようだ。その中で、顕著な違いとして曲のイメージ(地図に例えられるような)を練習前に詳細に持っているかを挙げているものがある。指使い等の直接演奏に必要な要素ではなく、曲想を詳細に描いているかということだろう。

 またチェスの名人の「目隠し対戦」の研究でも、盤面を瞬間的に暗記できるのは、チャンク(塊)として局面を掴み、その上位の知的構造として認知しているのだそうだ。だから無作為に駒を並べた実験では、初級者と差がつかないらしい。

 数学でも、解答を考え始める段階で見通しを立てる方策部分が、大きなカギを握る。今回の共通テストでは、計算量が多過ぎて時間が大幅に足りなかったので一概には言えないが、解法の誘導文が、先が見えにくい方向のアプローチで、見通しが立たなかったのではないだろうか。最後の答え自体を知っている問題があったせいか、その違いを強く感じた。また先日、高校生の入試初級程度の質問対応で、こちらは初見でも答えの見当がつき、最適な方針がすぐ見えるのに、学習内容自体はよく理解していても高校生は苦戦するという同様の体験をした。

 先を見通して考える力の養成は、単に数をこなせということではないはずだ。新年度です。取り組むべき課題は少なくない。スタッフ一同研鑽していきます。

※この内容は2022/03塾だよりに掲載したものです。
 昨年から始まった大学入試共通テストに対する、各方面からのさまざまな論評は、今回の難化によって、ますます続きそうである。
「思考力・判断力・表現力」を問うという考え方に対して、2年実施されたことで現在の出題の方向性は、少しはっきりしてきた。もちろん傾向は変化し続けるであろうが、考え方の基盤の方向性ははっきりあると思う。その形が見えてきたことで、進歩した点もわかるようになったが、新たな課題も明確になってきた。
当然、様々な意見や異論もあるだろう。
 しかしながら、少なくとも思考力を全面に押し出しての改革、ぜひその理念を目指して試行錯誤しながらさらなる前進を目指してほしい。形ができたらそれでよいというものではないはずだ。
 そして、私たちもそれに対しての単なる表面的な対策ではなく、本質的な思考力を伸ばす方法の技術開発と実践によって生徒たちの力自体を伸ばすことで、結果をだしていきたいと考える。
 まだ始まったばかりだ。

[巻頭言2022/02より] 受験は団体戦!

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2022年02月号)

受験は団体戦!

 入試時期に第6波が押し寄せてきた。これを書いている時点では、先の流れは見通せないが、いずれにしても厳しい感染状況で入試に立ち向かうことになる。感染防止に努めながらも、学力を伸ばすことをしっかり続けていくことは言うまでもない。とくに受験生に対しては、昨年の同じ時期の第3波の経験を活かして、本番で力が発揮できるように「心」の指導も、最大限に努力します。
 「心」の指導、と、これは敢えて書いた。入試本番の日だけ、受験勉強で積み重ねてきた本人の力を超えた特別な力が発揮できることはありえない。持っている力を出しきるだけでもなかなか難しい。だから、一発勝負のやり直しの効かない場では、ここ一番で力を出しきる「心」の訓練、即ちメンタルトレーニングをしておくことが大切になる。それには、メタ認知能力が関わる判断力、危機管理力というようなものも含まれる。その訓練をしていても練習は本番ではない。よほど力に余裕があるようなときでなければ、「初めて」の一発勝負では力を出しきれない。できれば本番のために、本番の経験を多く積むことが一番であろう。
 しかし、ただ経験を積めば解決できるわけではない。適切な振り返り、つまり力が発揮できなかった課題点を正しく見つめるためのフィードバックが不可欠。課題に対して具体的な「心」の改善をしなければ、成長する機会にはならない。
 そのために私たちは、解答速報や分析のスピードを非常に大切にしているが、受験生にとってその認識を一番効果的に与えてくれるのが仲間の存在である。それは自分が発揮できた力の相対的な座標を知ることだけに留まらない。一緒に切磋琢磨してきた仲間だからこそ生まれる、頑張ろうという気持ち。私たちは、長く多くの経験からその重要性を確信している。受験は団体戦!! 頑張れ受験生!

 今年もやります! 千葉テレビ「公立高校入試解答解説」を今年も生放送で担当します。受験生たちへの励みになるよう頑張って準備します。ご期待ください。

※この内容は2022/02塾だよりに掲載したものです。
 「受験は団体戦!」
 今年の受験は、首都圏全体で志願者増加の傾向が顕著にでた難関中学入試、制度改革2年目で難関公立高校の倍率が大きく上昇した高校入試、そして共通テスト2年目で大幅に難化した大学入試、どれも難関受験生にとっては厳しい入試だった。
そういう苦しい場面に直面したときほど、仲間の存在の差は大きい。
 そして、ちょうど今は次のステージでのスタートダッシュに向けての時期である。そのときに差がでるのも仲間の存在だろう。
 ともに、自分に厳しく、競い合い磨き合ってきたからこそ生まれる真の意味での仲間。その真の仲間に出合える「場」として機能するように、今年度も努力します。

[巻頭言2011/05より] 歩きながら考える

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2011年05月号)

歩きながら考える

 毎年恒例の「難関中学高校受験研究会Special Program」、今年もたくさんの保護者の皆様にご参加いただきました。ありがとうございました。
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 第二部の特別講演、木下先生のお話はいかがでしたか。これをきっかけに、親が子供に託している本当の気持ちをもう一度振り返ってみていただきたい。子供の未来の幸せとは何か、どんな状態なのか。
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 何かを考えるときは最初にゴールから考えることだ。いつまでにどうありたいのか、そして何のためになのか。目標ではなく目的が大切。それは視点を変えてみれば、未来に向かってものを考えることに他ならない。ゴールへ進むにはどうしたらいいか逆算して考える。そんなときは、立ち止まってではなく歩きながら考える方がいい考えが浮かぶ。ぜひ試していただきたい。

 5・6月に小中学部保護者対象「難関高校受験研究会Advanced Program」を教室学年別に開催する。具体的な学習法に加え、「子育てのヒント」もお話しする。高校部の受験生の保護者対象「難関大学受験研究会」を開催する。ぜひ、皆様、ご参加ください!

※この内容は2011/05塾だよりに掲載したものです。
 「歩きながら考える」と題しているが、その点にはあまり触れていなかった。
 脳科学では、脳は「めんどくさがり屋」だとされている。脳にとって負荷のかかること、つまり行動を起こす、難しいことを考える、できないことを勉強するなどは、やり始める前にやりたくないという状態になる。ある行動を起こす前に、その行動の負荷を想像することで、「いやだな」という気持ちを引き起こす。
気持ちは、脳の状態なので、直接意志の力ではコントロールしにくい。「やる気」をだそうと思うだけでは、やる気を生みだしにくく、行動につながらない。座ったり寝ころんだりしている状態で、じっとして考えていると、そのままいる方が脳にとっては楽なので、動かない行動を脳は選択してしまう。
 こういうときは、まず動こう。立ち上がる、一歩歩くという単純な行動によってでも脳の状態は変わる。いったん歩きだすと、そのまま歩き続ける方が脳にとっての負荷が小さくなる。そういう脳の状態のときに、考える方がよい考えを生む確率は高い。また「よし勉強するぞ」という行動する決意を生み出す障壁も低くなる。やる気を出すと考える前に、まずすぐに動くことが、やる気を生み出すコツだろう。

★木下晴弘先生の講演に触れています。
 保護者としての視点で、感動する著書を多数書かれているのでいくつか紹介しておきます。ぜひご一読を。