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もしもベートーベンがワイン好きでなかったら…

こんにちは。
八千代緑が丘校の轟です。

今回も、歴史に影響を与えた化学のトピックを
ご紹介したいと思います。

古代ローマにおいては、蜂蜜以外に手に入る甘味料は、
大変に貴重な存在でした。
そのため、酢酸菌などの作用で酸敗しかけたワインを、
鉛製の鍋で煮ることによって得られる「サパ」と呼ばれるシロップが、
甘味料として好んで作られていました。

サパの主成分は、鉛製の鍋の表面を覆っている酸化鉛(II) PbOが、
酸敗したワインに含まれる酢酸CH3COOHと反応することによって生じる
酢酸鉛 (CH3COO)2Pbです。サパには殺菌効果もあったことから、
ワインの甘味付けや、果物の保存などにも一時的に使われていました。
当時、鉛化合物に毒性があることはほとんど知られておらず、
サパを添加したワインを好んでいた貴族たちの間で、
鉛中毒者が続出したといわれています。

酢酸鉛(CH3COO)2Pbは、見た目も味も砂糖C12H22O11とそっくりで、
「鉛糖」あるいは「土の糖」とも称されます。
しかし、他の鉛化合物と同様、強い毒性がある物質です。

当時の人の遺骨を調べてみると、毛髪から高濃度の鉛Pbが
検出されるといいます。
サパを再現した現代の科学者たちは、ブドウ果汁1 g当たりに
1 gの鉛Pbが含まれていると特定しました。
ローマ人の平均寿命は20歳代前半に過ぎず、上流階級には
不妊が多かったと聞きます。
これには、サパなどによる、鉛Pbの毒性が影響している
のではないかと思われます。

この鉛中毒が不妊や神経毒性を生じ、ローマ帝国の滅亡の一
因になったという説さえあります。

鉛中毒は精子数の低下をもたらすため、後期のローマ皇帝の多くが、
子をなそうと多大な努力を払ったにも関わらず不妊に苦しみました。

また、西暦15~225年にかけて、ローマの支配者の多くは鈍重かつ残忍で、
身体的もしくは精神的に障害を負っていました。ローマ皇帝の中で、
ネロのような異常性格者が出たのは、彼が鉛中毒になっていたから
と考えれば、納得できます。

ネロは17歳でローマ帝国の第5代皇帝(37~68年)に就き、
減税や属州防衛に努めるなど、善政を強いて
ローマ市民に喜ばれていました。

しかし、やがて人が変わったように残虐になり、
母アグリッピナや妻オクタウィアらを次々と暗殺し、
遂にはローマを焼き払った張本人として、
歴史にその名を刻むことになりました。

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かの大作曲家ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンも、
慢性の鉛中毒であった可能性があるといいます。

2000年、アメリカのアルゴンヌ国立研究所が実際に
ベートーヴェンの遺髪を分析した結果、
通常の100倍近い大量の鉛Pbを含んでいることが分かったのです。

ベートーヴェンは、20歳代後半から持病の難聴が悪化し、
30歳になる頃には、ほとんど耳が聞こえなくなっていました。

ベートーヴェンがピアノに耳を当てて作曲していたという逸話は、
誰しも聞いたことがあるでしょう。

ベートーヴェンは、ワインの生前年代を指定して飲むほどの
愛飲家として有名であり、晩年にベートーヴェンを苦しめた
腹痛や神経系の不調からくる短気、難聴に悩まされた末の
聴力喪失も、サパによる鉛中毒だったのでしょうか。

ただし、鉛中毒が難聴を引き起こすメカニズムについては
よく分かっておらず、先天性梅毒や耳硬化症だったという
説もあります。

もしベートーヴェンがワイン好きでなければ、
未完の10番目の交響曲を書き上げることができた
のかどうかは、誰にも分かりません。

ファイル 3083-1.jpg ファイル 3083-2.jpg

また、日本では、江戸時代から明治時代にかけて、
「鉛白」を含むおしろいによる鉛中毒がありました。

鉛白とは、炭酸鉛(II) PbCO3と水酸化鉛(II) Pb(OH)2の
2:1混合物であり、紀元前4000年前のエジプトの時代から、
装飾用顔料として使われていました。

おしろいには、焼いた牡蠣の殻や真珠、チョークなども
用いられたことがありましたが、少量で広い面積を覆う
ことができ、輝く白さを示す鉛白より、
優れたおしろいはありませんでした。

しかし、有害な鉛化合物を顔に塗るのだから、
人体にとって良い影響があるはずはありません。

特に毎日厚化粧をする歌舞伎役者や遊女たちが、
鉛中毒になって命を落としていったことは
よく知られています。

日本では、1935年に鉛Pbを含むおしろいは販売禁止となり、
現在では、安全な酸化亜鉛ZnOや二酸化チタンTiO2などの
おしろいが使用されています。

こうやって歴史や日常の物事を見ていくと、
生活と化学は切り離せない関係にありますね。
化学を学ぶことで、身近な現象に対するモノの見方に
深みが出てくるかもしれません。

(八千代緑が丘校 轟)


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