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リスタート・イット・アップ

こんにちは。おゆみ野駅前校の渡邉です。

さて、長いようで短い夏も終わりました。
特に受験生の皆さんは、自ら目標を立てて夏を過ごしてもらったかと思います。
結果の程は、いかがでしたしょうか。

目標達成は素晴らしいことです。
しかし、残念ながら目標には届かなかった方もいるのではないでしょうか。
もちろん、必ずしもここで諦める必要はありません。
さらに誤解を恐れず申し上げれば、一度の挫折で諦められるのであれば『その程度』の夢なのでしょう。
折しも最年少となる藤井聡太三冠が誕生したこともありますので、とある棋士を引き合いにお話させていただきます。

今泉健司五段というプロ棋士がいます。
ある意味で藤井三冠と対を成す、最年長でプロ入りを果たした棋士です。
当時の年齢は、41歳。
どれほどの実力者でも、強さに陰りが見えるとも言われ始める年齢です。
そんな年齢で、今泉五段はやっとスタートに立ちました。

今泉五段はプロ棋士の養成所である奨励会を『2度』退会しています。
1度目は、26歳という年齢制限によるものです。
実はプロ棋士への道は非常にシビアな一面があり、
規定の年齢までに4段に昇段できない場合、有無を言わさずに退会となります。
幼少の頃より将棋で生きていく道を目指した果て。
「あなたはプロ棋士としての才覚はない」という、あまりに酷な宣告です。
その苦悩たるや、まさしく筆舌に尽くし難いものであったはずです。

さて、一報近年従来の囚われずにプロを輩出すべく、編入試験制度というものが整備されました。
一度は夢破れた今泉五段は、この制度により2度目の奨励会入りを果たします。
この間、糊口を凌ぐために職を転々としながら将棋の勉強を続け、まさに寝食を惜しんで研鑽に励みました。
結果、アマチュアの大会で数々の結果を残し、プロ相手に勝ち越すことで奨励会入会となりました。
見事に再起を図ったかと思いきや、しかし現実は再び容赦なく襲いかかります。
プロとして認められる四段へと昇段できないまま無情にも既定の期間が経過。
再びの退会処分となりました。

その後、再々度の挑戦を経て見事プロ入りを果たすのですが、少々長くなって参りました。
恐縮ですが、是非各々お調べいただければと存じます。

さて、この度筆を執ったのは、当時を振り返った今泉五段の仰る次の言葉をご紹介したいがためです。

「技術も低かった。その割には自分に変な自信を持ちすぎていた。
言ってみれば傲慢な部分もあったし、自分の弱さを素直に見つめなおす強さもなかった」

何事でも、できなかった理由は、意外なほど簡単に見つかります。
学習量や時間であれば、体調が悪かった、嫌なことがあった、やる気が出なかった、など。
成績であれば、ケアレスミスが多かった、時間配分を間違えた、対策不足なところが出題された、などなど。

しかし、全て含めて今の自分であり、実力です。
もしこのままで届かない目標であるならば、志望を変えるのか、自らを変えるのか。
秋の夜長に、今一度しっかりと自分自身と対話していただければと思います。

朝夕と涼しくなって参りました。
どなたも時節柄、ご自愛ください。

(おゆみ野駅前校 渡邉)