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ふたつよいことさてないものよ

本日のブログのタイトルは
かつて文化庁長官を務めておられた河合隼雄氏が
書籍の中で紹介されていた言葉を拝借しました。

『ふたつよいことさてないものよ』というのは、
ひとつ良いことがあると、ひとつ悪いことがあるとも
考えられる、ということだそうです。
悪いことは、何か良いことのバランスのために存在している
という考え方なのだそうです。

私も、つい、良いことずくめを望んでしまい、
何か悪いことがあると文句のひとつも言いたくなってしまいます
が、そんなときに、「ふたつよいことさてないものよ」
という言葉を思い出すと、納得まではいかないものの、
少しは腹立ちを抑えることができるように思えます。

現在、外出自粛などの緊急事態措置の維持が続いており、
何かと不便な生活が続いています。
塾でも、生徒たちに自宅学習をして頂いており、
「早く塾に通いたい」という声をよく頂きます。

そんな状況だからこそ頑張っている生徒たちの姿を
今日はご紹介致します。

生徒たちは自宅学習に取り組んでいますので、
塾から電話連絡を通して、生徒の様子や学習の話を
しています。
また、生徒の方から、電話で「わからないところがある」
と問い合わせを頂くことも多々あります。

私は電話で数学の質問にお答えする機会が沢山ありますが、
対面式で直接答えるよりも、生徒にとっても不便さがあります。
例えば、数式の式変形や、図形のどこに補助線を引くだとか、
書いたものを見せると伝達は速いのですが、
電話ではそれができません。

ですから、「ことば」のみを通して伝えることになります。
伝える側の私も伝え方の工夫が必要ですが、
受け取る側の生徒も、ことばを通して、解釈して形にするため
より思考することになります。

このことは漫画と小説の違いに似ているように思います。
漫画はことばだけでなく、絵を通して理解できるため、
とてもわかりやすいです。
一方、小説は絵がなく、ことばのみを通して、
読み手が場面や風景を想像することが必要になります。

その想像するところに思考力が育まれるように、
ことばのみの回答を通して、生徒たちが一生懸命に努力している
姿が電話を通してひしひしと伝わってきます。

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つい先日、とある受験生からの数学の質問内容は、
難易度が難しいものでした。
授業の理解度を図るテスト問題なのですが、問題の内容は
一橋大学や、東北大学、名古屋大学などの難関国公立大学の入試問題の
改題(ほとんど同じ)だったのです。

その生徒は電話ごしに躍動します。
私の想像を超え、その生徒が自分なりの解釈と、
自分なりの新たな思考をし始め、私は答えは言わずに考えるためのヒントを
渡すに留めたのですが、見事、大問5題を全て自力で完答できるように
なりました。
難関国公立大学の入試問題の大問を5題解いたわけですから、
入試問題1年分を全て完答できたのと同じことです。

改めて、生徒の持っている力というのは素晴らしいなと
感じる一面でした。

現在、まだまだ不便な状況が続きますが、
だからこそ、そこに工夫が生まれ、これを機に
大きく考える力が飛躍できればと願っています。
そうなれるように、私も生徒たちをサポートしていきます。

(大網白里校 轟)