Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2026年6月号)
危機管理能力を鍛える
入試では一発勝負の本番力が試される。もちろん、実力が必要であることは言うまでもないが、ここ一番で力を発揮する、一種の危機管理能力が試されている。
私たちは、その側面にずいぶん前から着眼して、その力を鍛える方法に取り組んできた。しかしながら、今年の入試結果を概観すると、もっと、ひとり一人に十分徹底できていればと感じる。
この一発勝負で力を発揮する能力は、いわゆる精神論、根性論では解決できない。その鍵を3点に大別すると、①正しい方法論による練習により脳のメタ認知力と対応力を鍛えること、②得点を最大化し失点を最小化する戦略を立てその訓練をすること、③ルーティンによるメンタルのコントロールを日常的にすることであろう。
例えば、①の一例として、問題集の解き方について考えてみよう。初めて学習する際には、単元別に難易度を順にあげ、解法を手順化して記憶していくのが効率がよい。確かに学校の定期試験のように、範囲が限られていて、見たことがある問題の到達度を試すなら、このような反復学習が効果的であろう。しかし、それでは、未知の問題をぶつけ本質的な力を問うてくる難関入試では太刀打ちできない。解法が予測できないようランダムに解くことで、脳に判断の負荷をかける、つまりメタ認知力が必要な意図的に負荷をかけて訓練することが重要だ。短時間で能率を重視した、目先の得点力を伸ばす指導では、鍛えることはできない。
本質的な「脳」や「心」を鍛える指導も、法則に基づいて体系化できるはずと考え、私たちは取り組んできた。同時に、それをひとり一人に十分にいき届かせるには、その指導力も必要である。危機管理能力の育成は、今年度の重点的に取り組む目標の一つに挙げた。原理原則に基づいた指導法をさらに高め、それをひとり一人に十分に指導できる指導者の能力を鍛えることに力を注ぐ。有言実行あるのみ。
※この内容は2026/6塾だよりに掲載したものです。
私たちは、本番で力を発揮できるかどうかは「能力」の一つとして捉えようという考え方をしている。それを「危機管理能力」と名付ける。
一般には、心理的なものとして精神論、すなわち感覚的な根性論などで語られがちだが、一定の結果を常に残すためには「科学的」な考え方が必要と考える。
そのような考え方に立脚した立場からは、上記の③のルーティンについてはしばしば語られている。メンタルのトレーニングによって、精神的なブレを解決しようとするもので、みなさまもよくご覧になっていることだろう。しかし、それは前提として②の戦略に基づく訓練が必要であることが触れられていないものが目立つ気がする。
さらに、①の初期の基礎段階の訓練に対する考え方で、大きな差がついてしまう可能性に言及しているものはほとんど見かけない。そして、目の前の結果への効率主義が、それを助長しているように感じる。すぐに正解を求める過ぎることは、思考力を鍛える妨げとなる。
「才能より努力」はよく言われる言葉だ。だが「短絡的なガムシャラな努力」ではなく「適切な意図的努力」がカギだろう。「能力」としてとらえることで、それを正しく鍛える「技術」も開発可能と考えている。ただし道は未だ果てしなく遠い。