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[巻頭言2024/09より] お手本

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2024年9月号)

お手本

 先日、ある座談会に参加した。業界誌の企画で、大学入試の変化にどう対応するかというお題での意見交換。話題の総合型選抜や新課程での共通テスト、情報I入試などへの変化、さらにこれから先の大学の変化、それらに対して、塾・予備校はどうすべきかという限りなく幅の広いテーマで、話をまとめての結論というより、現状と考えられる問題を並べて提起した形で終わった。

 さて、その終盤、変化への対応として、さらにオンラインやICTなどが進んでいったときに、そもそも塾・予備校の講師がすべきことは何なのかという話が出た。その場では深くは議論せずだったが、少々気になったので、整理しておこう。

 すでに現状でも、授業の「教える」部分、インプット中心のティーチングは、映像授業などに置き換えることが可能になってきている。それに対して、アウトプットが必要な、いわゆるコーチングと呼ばれている部分は、人間の先生しかできないだろう、というのがこれまでの認識だろうか。しかし、最近のAI技術の革新によって、この境界が不明確な捉え方のままでは語ることができなくなった。すでに学習成果を細かく分析し、どの部分を伸ばすのが最適か、それにはどんな勉強をすればよいかという指導に対してAI技術の導入が進められている。早晩、進路指導や受験校選択への応用にも進んでいくに違いない。すると、コーチングのやる気を引き出すコミュニケーションが残ると予想する人が多いが、この部分もAIの進化で実現する可能性すらあると考える。では、指導者しかできないことは何が残るのか。

 その一つの答は、勉強を楽しむ姿を身をもって伝えること、楽しいとはどういうことなのかを、お手本となるほど、見せて伝えることではないかと考える。「気持ち」は、人からしか伝えられない。心は、人からしか共鳴できない。学ぶことが楽しいことを、自らの姿で伝えていくのは、子供に対する大人の役目だ。

※この内容は2024/9塾だよりに掲載したものです。
 今年は、この座談会だけでなく、講演や取材などでお声がかかることが少なくない。たまたまのめぐり合わせであろう。その中には、非常に珍しい役回りとして、ある会での講演者の方に「講演後の懇親会で質問役として登壇して、インタビュー時間長めにとったので、オフレコだから存分に突っ込んでほしい」というものまであった。
 それらのおかげで、塾・予備校業界の方たちにお会いする機会で、久しぶりなのに、向こうは、最近会っている気になっていた、というのが幾たびかあった。ありがたいことである。
 座談会は、実は少し気が楽だ。講演のときは、当然十分に準備をする。基本的にスライドを使うので、事前だけでなく、当日の会場での準備も。インタビュー取材のときは、油断すると脱線して骨子が寄れてしまうので、テーマを事前に確認した上で、必ずメモを用意する。一番しびれるのは、入試当日のテレビ生解説。いつも最後の出番で、終わる時刻は絶対にはみ出せない。出番が回ってくるまで使える時間が確定しない中の、秒単位となる。
 今回の座談会は、テーマが明確なので、それなりに準備した。情報Iのサンプル問題も研究し直して臨んだが、記事となって読み直すと、ちょっと無難過ぎだったか…。

記事はこちらで読むことができます⇒ http://www.randomwalk.jp/kan/