Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2024年3月号)
新しい挑戦へ
春を迎える。新しい環境への変わり目の時期である。塾では新しい学年が早々にスタートだが、学校ではこれから春休み、そして新入学や、新しい学年へ進級となる。子供たちにとって、その変化は緊張を生む。この緊張がこれから始まる未知のモノへのワクワクドキドキとなり、前向きな気持ちにする力に本来はなるはずだ。
ところが、学校生活が生活の中心であり、場合によっては『人生』の大部分を占めてしまっていると感じている子供たちにとって、この環境変化は、大きな圧力と感じ、マイナスの心理的負荷の原因ともなりうる。大人たちが、この過ぎ去ってしまった日の心の状態を忘れて、さらに負荷をかけてしまうことのないように、前もって子供たちの状況を正しく想像する準備をして、気をつけていただきたい。
未知のものに対しては、新しい興味を感じポジティブになる心と、不安を感じネガティブになる心が同時に存在するはすだ。学校生活を送るには、それを単に受動的に受け取るだけでなく、能動的に行動することが要求される。不安な気持ちは行動を抑制する働きがあるので、不安が上回ればブレーキが強く働き、行動を起こさなくなってしまう。行動を起こさないことによって、より心理的負荷を増大させるので、さらに行動を起こしにくくなり、マイナスのスパイラルに陥りやすい。
それを大人は「意志」や「やる気」で克服させようと考えがちだが、よいやり方とはいえない。行動の大半は習慣が決める。行動の結果、やる気や意志を強くする。最初の行動さえ始めれば、持続はし易い。大人が最初の負荷を抵抗なく乗り越えることができるのは、経験によって、目の前に多少壁があったり失敗したりしても、行動していけば最後は「大丈夫だ」と長期的楽観で考えているからであろう。
新しい挑戦のとき。前向きな気持ちを引き出せるように「大丈夫」と伝えていただきたい。新しいことはワクワクドキドキする「楽しいもの」と感じられるように。
※この内容は2024/3塾だよりに掲載したものです。
誌面の都合で、ここでは「大丈夫と伝えて」とだけ書いてしまっているが、これが実は難しい。
不安に感じて、行動にブレーキが働こうとしてしまっている子供に、むやみに「大丈夫だよ」と言い聞かせようとすることは、十分に気を配らなければ、子供の感情を聴かずに、否定してしまう形になる。同じように「頑張れ」や「やればできる」などのポジティブとして発しているつもりの言葉も、状況と言い方によって、受け取る側は、ネガティブな否定語として受け取ってしまう。否定語は行動にブレーキをかけてしまうことは、ご存じの方も少なくないと思うが、知っていても油断すると思わぬ言葉が否定語に働いてしまう。
「大丈夫だ」や「頑張る」「できる」などがポジティブに働くのは、自分から感じ、考えて発するときだけだ。
ただ一方的に直接「大丈夫」と言って伝えるだけでは「大丈夫だ」とは感じない。きちんと話しを聴き、心を上向きにしていって、間接的に「大丈夫かも」と考えるようなきっかけをつくるしかない。
相手の気持ちを引き出すには、その前にまず相手の気持ちを受け入れることからだ。