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[巻頭言2014/12より] 前向きに

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2014年12月号)

前向きに

 早くも、師走である。なんとなく、追い立てられる気持ちになる。時間がないと否定語が口に出やすい。しかし、不安な感情、マイナスな感情を持つことは、行動に大きな負の影響を与えることは容易に想像がつく。

 脳科学者の方の話によると、マイナスの感情を連想することが脳の記憶力に影響を与えることが、イギリスのビズビィ博士の研究(Negative affect impairs associative memory but not item memory , James A.Bisby and Neil Burgess)でわかったそうだ。電気ショックを与えてマイナスの感情を発生させ、記憶力との相関をテストする。すると、電気ショックをときどき与えながら記憶させたときには、通常の記憶力と大きな変化は見られないが、電気ショックを想像するような背景を見せながら実験すると、記憶力が低下したのだそうだ。

 このことから、直接的な負の刺激よりも、負の感情を連想する不安な気持ちが記憶を低下させていることがわかる。
 つまり、何かよくないことがあったときに、それをどうとらえるかによって結果が異なるということ。同じことに出会っても、考え方一つで脳の状態は大きく変わり、成果が変わることになる。愚痴を言ったり、不安な感情を抱え込んだりせず、前向きに、どうしたらうまくいくかを、考える習慣が大切。

 そのためには、周りの環境が与える影響も大きい。子供たち、そして受験生には否定語の言葉をかけないようにするだけではなく、そんな言葉を引き出さないようにしたい。言葉は無意識に内に発せられる。大人もまず肯定的にものをとらえよう。

 「忙しい」は心を亡くすと書く。師走こそ、改めて当たり前を一歩ずつ進みたい。

※この内容は2014/12塾だよりに掲載したものです。

 (例によって季節外れの書き出しだが…)

 本稿の中の主題、記憶に影響を与える「負の感情」だが、それは本人の日頃の考え方、周りに対する捉え方が大きな決定力をもっているだろう。習慣が成せるものの一つであるはずだ。その考え方、捉え方は本人以外は、直接的には知ることはできないが、発する言葉から容易に類推することは可能であろう。発言に、否定語が多いか否かに注目するというのは非常にわかり易い。
 ところがその状態を変えることが難しい。本人が悪い習慣を自覚して、自ら変えようと努力しさえすれば、案外簡単なのだが、そのために、その前にその本人の考えを変えなければならない。そもそも、その本人の考えを変えるために習慣を変えようとしているのに、習慣を変えるには考えを変えるのが早いというのだから、いわゆる「タマゴが先か、ニワトリが先か」問題である。
 だからこそ、周りの大人のよい影響が必要となる。子供たちから強く前向きの考え方と気持ちを引き出すために、常に、大人も強く前向きな考え方や気持ちを持たなければならない。過去に向き合うと否定的な考えを引き出しやすい。意識を未来に向け、素直に明るく前向きな気持ちを引き出すようにしていこう。

 未来は明るいと強く信じることが始まる。