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[巻頭言2014/09より] 目標と挑戦

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2014年09月号)

目標と挑戦

 夏期講習も無事に終了した。受験生にとっては、ひとつの限界に挑戦した夏になったはずだ。そして、いよいよ志望校に真剣に向かい合う時期を迎える。

 ゴールを最初に描くことは、ものごとを成功に導く出発点である。そしてそのゴール地点の設定をどこにするかが、とても大切なことだ。目標は高い方がよいとよく言われるが、それは必ずしも正しいとは限らない。

 筋力トレーニングでは(目的とするのが筋力の瞬発力なのか持続力なのか筋肉量なのかで異なるそうだが)、ウエイトが重いほどよいわけではない。また回数が多ければよいのでもない。最も効果的なトレーニング法は10~15回の反復回数で自分の限界に達する適正な負荷をかけ、それを越えようと力を振り絞って頑張ることだという。この原理は脳でも同様だ。自分のできないこと、少しだけ難しいことに挑戦し続けることが、脳を一番活性化させるのだそうだ。他人とどちらができるかという比較ではなく、本人の限界を超える挑戦に意味がある。

 もちろん低すぎる目標では成長を促さないが、高すぎる目標も意欲を生み出さない。できると確信できる限界ギリギリを少しだけ超えるところに設定することが成長の大きなカギ。ただしその限界点は、客観的な判断ではなく本人の潜在意識が支配している。周りが無理に高くすると、挑戦する意欲を失うだけ。高く挑戦する気力が足りないときは、まず届く目標を決め、できるだけ早くクリアする。達成が意欲を生む。その意欲で、次のより高い目標を目指す。この適正な負荷と前進感が、気力を創り、結果を実らせる。

 保護者の皆様、お子様にとって常に適切な負荷となるように、その時期の目標をお導きください。

※この内容は2014/09塾だよりに掲載したものです。
 目標設定能力が、その人の能力を大きく決めるという話は重要なので、繰り返しとりあげている。長期的に追跡した研究も発表されている内容だ。
 ここでいう目標設定能力とは、どこまで、いつまでに達成するかを、決める能力のことである。ただし、ここで述べているように、現状から届く結果を客観的に正確に予測することに意味があるのではない。本人が潜在意識で本気で届くと信じられる、ギリギリの限界ラインか、少しだけ上の、もしかすると、無理かもしれないが頑張れば届くかも、と思えるところに定められるかがカギである。客観的な限界ではなく主観的な限界を、自ら選ぶことができるかの能力が、その人の能力の限界を決めてしまう。
 その、主観的な信じられる限界を超えた、高い目標を無理に決めてしまうと、意欲は減退する。だから目標は高ければ高いほどがよいというのは、正確には正しくはない。行動する意欲を生み出すには、自分の努力によって結果が変わると信じていること、限界的努力をし続ければ到達可能だと信じていること、その範囲の中で敢えて最も高い目標を選ぶこと、そして自ら選択することが必要条件だ。
 ところが、自己肯定感が低い場合、信じられる限界が客観的事実より低すぎて、限界的努力が必要な高い目標を選ばないことが多い。自信のない子供は、自信のない目標を選び、それでも自信を持てずに失敗する。低すぎる目標では、意欲的な努力を生み出さない。
 そういう子供に、無理やり高い目標を押し付けてもうまくいかない。そのときは、時間軸を短く選ぶことがよい。ずっと先の高い目標ではなく、今すぐ行動すれば、すぐに結果がでるちょっとだけ高い目標を選択して行動を促し、達成体験を積み増していくことで、自己肯定感が増加する。その繰り返しで、徐々により遠くの高い目標へと進むことがよい。
 「保護者の皆様、お子様にとって常に適切な負荷となるように、その時期の目標をお導きください。」と結んでいるが、目標を選択するのは「本人」でなければ意味がない。保護者にできることは、一歩引いて俯瞰し、「本人」が、自分で選択する機会を提供することだけであろう。
 保護者として、より成長しようとしている皆様を応援します。