Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2022年04月号)
学ぶことを好きになってほしい!
(業界誌のインタビューの一部だが、少し書き加えてここにも掲載しておきたい)
昨年末、高校時代の担任の先生が亡くなられた。享年90歳。数学を担当し、強い言葉やきつく叱ることが全くない、穏やかな話し方の先生で、のちに予備校でも教鞭を執られた。熱血教師、凄腕の先生というわけではなく、印象深いエピソードがあったわけでもないはずだが、後になり、毎年お招きするクラス会で、みんなから慕われている姿を見て、これが先生のありがたさなのだと気づいた。
引退されて随分経った頃、ご自身でコツコツとまとめられた数十ページに及ぶ参考書の草稿をお預かりした。クラス会幹事を引き受けていたからだが、仕事柄、意見を求められたのかもしれない。恐れ多くて、のちにワープロ原稿をそのまま印刷し同級生に配布するに止めた。読み返すと、いわゆる解法の解説ではなく、考える力がつくようにと大変工夫されていた。解法方略をどう見つけ、解答へとたどり着けばよいかを、入試問題を題材に一般化しようと試みていて、良問として選ばれていたのは、東大・京大・東工大・一橋・早稲田理工限定(全部解きました)で、当時の3年間分。あとがきには、翌年の入試が出たら差し替えるとの熱意が書かれ、最後に「みんな数学が好きになってほしい!」と結ばれていた。
これこそが、たくさんの先生たちが作ってきた教育の歴史だと思う。
私たちが仕事で携わる受験は時に難行苦行に例えられ、目的達成のために、苦しくても耐えるべきものと扱われがちだ。しかし、それではいけない。学ぶことが好きだという気持ちを失わないように、むしろ受験を通してこそわかる学ぶ楽しさを次世代に伝えていくことと、成績向上や志望校合格を両立させることこそが私たちの使命であると考える。未知のことを知る瞬間の楽しさ、わかった! できた! という喜び、その学びの原点の追求を目指し頑張る決意だ。
※この内容は2022/04塾だよりに掲載したものです。
いただいた参考書冒頭の「はしがき」には、「「数学の問題は考えて解く」ことを知ってもらうのが、この本のねらいですから、気楽な読み物として読んでもらえるように」と書かれていて、「考える学習で楽しさと自信が育つことを願っています」と結ばれている。先生は、数学の受験問題を使って「考えること」の楽しさを伝えたかったに違いない。「ひらめきとか天才とか言う」「特別の才能が必要」ではないとも書かれている。誰でも「自然の心の働き」を使って考えることで、このわかったという楽しい瞬間を感じることができるはずだと信じていらっしゃったのであろう。
まだまだ追求する先は遠くまで続く。頑張ります。