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[巻頭言2022/03より] 考える力の養成のカギ

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2022年03月号)

考える力の養成のカギ

 2回目となった大学入試共通テストは、大方の予想通り難化した。ご存じの通り、とくに数学の平均点が大きく下がった。一部に、数学の前提になる「読解力」に問題があるとの指摘も目立つが、はたしてそうだろうか。どうも未知の問題に初めて立ち向かうという受験生同様の「場」に自分を置いて解いていない人の指摘であるように感じる。問題解法が理解できるかと、入試で力が発揮できるかでは、いわゆるメンタル面の影響だけではなく、大きく異なる要素がある。

 優れた音楽演奏家と中・初級者の練習の際の違いについての心理学の科学的研究は少なくないようだ。その中で、顕著な違いとして曲のイメージ(地図に例えられるような)を練習前に詳細に持っているかを挙げているものがある。指使い等の直接演奏に必要な要素ではなく、曲想を詳細に描いているかということだろう。

 またチェスの名人の「目隠し対戦」の研究でも、盤面を瞬間的に暗記できるのは、チャンク(塊)として局面を掴み、その上位の知的構造として認知しているのだそうだ。だから無作為に駒を並べた実験では、初級者と差がつかないらしい。

 数学でも、解答を考え始める段階で見通しを立てる方策部分が、大きなカギを握る。今回の共通テストでは、計算量が多過ぎて時間が大幅に足りなかったので一概には言えないが、解法の誘導文が、先が見えにくい方向のアプローチで、見通しが立たなかったのではないだろうか。最後の答え自体を知っている問題があったせいか、その違いを強く感じた。また先日、高校生の入試初級程度の質問対応で、こちらは初見でも答えの見当がつき、最適な方針がすぐ見えるのに、学習内容自体はよく理解していても高校生は苦戦するという同様の体験をした。

 先を見通して考える力の養成は、単に数をこなせということではないはずだ。新年度です。取り組むべき課題は少なくない。スタッフ一同研鑽していきます。

※この内容は2022/03塾だよりに掲載したものです。
 昨年から始まった大学入試共通テストに対する、各方面からのさまざまな論評は、今回の難化によって、ますます続きそうである。
「思考力・判断力・表現力」を問うという考え方に対して、2年実施されたことで現在の出題の方向性は、少しはっきりしてきた。もちろん傾向は変化し続けるであろうが、考え方の基盤の方向性ははっきりあると思う。その形が見えてきたことで、進歩した点もわかるようになったが、新たな課題も明確になってきた。
当然、様々な意見や異論もあるだろう。
 しかしながら、少なくとも思考力を全面に押し出しての改革、ぜひその理念を目指して試行錯誤しながらさらなる前進を目指してほしい。形ができたらそれでよいというものではないはずだ。
 そして、私たちもそれに対しての単なる表面的な対策ではなく、本質的な思考力を伸ばす方法の技術開発と実践によって生徒たちの力自体を伸ばすことで、結果をだしていきたいと考える。
 まだ始まったばかりだ。

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