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[巻頭言2021/12より] 才能を引き出すには

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2021年12月号)

才能を引き出すには

 さまざまな分野で非凡な能力を身につけたエキスパートたちが、どのような子供時代を送ったかの共通因子を分析した研究があるそうだ。Benjamin Bloomの Developing Talent in Young People(1985)。残念ながら邦訳は発行されていないため、引用紹介で一部をさっと読んだだけで恐縮だが、紹介しておきたい。

 研究チームが分析したのは、ピアニスト、彫刻家、オリンピック水泳選手、ワールドクラスのテニスプレーヤー、数学者、神経学者という6つの分野のエキスパート120人。その成長過程から共通因子を探しだした。

 するとまず3つの成長段階に分けられたそうだ。第一段階が、出会って楽しむ段階(romance stage)、続いて初級の指導者についてレッスンを受ける段階(work at learning the grammar of the field)、最後に一流のコーチの下でトップクラスを目指す段階(work toward mastery)。それぞれの段階で、子供本人、指導者と親のエキスパートに成長させた特徴的共通因子が存在する(賢明なる皆さまは、既に予想していることと思うが、生まれつき「才能」ではないと結論づけている)。

 第一段階では、最初は子供自身が興味をもって始めること、それ自体を楽しむこと(うまくなることを優先させない)。それには親が興味を持って楽しく取り組んでいるお手本を見せるのがよい。さらに何かちょっとできたときに誉めること。

 次の第二段階では、指導者が練習自体を楽しくできるようにすること。楽しいから熱中する状態にしてやる気を引き出すこと。その中で子供は徐々にもっとうまくなりたい、できるようになりたいと内的動機を高めていく。親は、それを支える役割に徹すること(指導しない、評価しない)。誉めて励ますことは重要。

 さらに数学者(つまり勉強の分野)だけの特徴があり、対象分野に取り組み始める時期が芸術やスポーツよりずっと遅く、親ではなく教師が知的好奇心を刺激し意欲を引き出すことだそうだ。

 つまり私たちの役割。心して頑張ります。

※この内容は2021/12塾だよりに掲載したものです。
 奇しくも昨日の11年前と同じ12月の内容。
 お気づきの通り、昔とは字数制限が少し増え伝えられる量も増えたが、伝えたいことは多く、毎回字数に収まるように推敲するのが厳しいのは変わらない。はたして、内容は、少しは進化しているだろうか。
 さて、非常に興味深い研究である。
 調子に乗って原書も求めてみたが、いささか内容とボリュウムに気圧されて積読になっている。
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 明日は大晦日。
 他にも、やり残していることがたくさんある。
 反省して、新しい抱負とともに新しい年を迎えよう。