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[巻頭言2020/05より] 磁場

Shingaku Express / 誉田進学塾だより 巻頭言より
(2021年05月号)

「磁場」

「最近の若い者は、...」というコメントは昔から繰り返されてきたようだ。これには、いろいろなご意見もあるであろうが、フリン(James Flynn)効果と呼ばれている現象がある。知能検査のIQを比較すると100年間で30ポイント程度上昇しているというのだ。もちろん知能検査は偏差値と同様の同年代に対しての相対評価なのでそのままスコアを比較することはできないため、同一問題などで修正比較をしてだが、欧米やアジアで同じ傾向があり文化による差ではないそうだ。つまり少なくとも基礎的な知能については最近の若い者の方が優秀であるということになる。これは分野によっての差などから、抽象的な思考が必要な現代の社会が影響を与えているとの仮説が有力視されている。抽象的な論理思考をする機会が増えたことが、(DNAを超えて)集団全体の知能を伸ばしたということだ。ただし、最近はこれと逆の負の関係性を示すデータもあり、まだ結論は定まっていない。

 また、やり遂げる力、忍耐力は若者より、年齢が高い世代がより強いとのデータもある。昔より「試練」が減ったため忍耐力が育成されなくなった、つまり時代が影響を与えた(コホート効果という)との説がある。一方、年齢を重ねれば伸びるという説もあり、長期的な追跡調査がなく、これもはっきりしていないのだそうだ。

 いずれにしても、どちらの能力も、少なくとも遺伝だけではなく、環境の影響を大きく受けているいうことだ。非認知能力は周りの高い能力を発揮している他人からの影響を受けやすいらしい。学力の場合、親の影響も少なくないだろう。子供の成績を上げようと直接的に介入するのではなく、親自身が、失敗しても諦めずチャレンジする姿を子供に示す方が、より良い結果を生むことはすでに分かっている。

 また周りの同世代からの影響は大きい。私たちの塾が切磋琢磨する仲間たちと真剣に過ごす「磁場」となるように、実践していきたいと考えている。

※この内容は2021/05塾だよりに掲載したものです。
 インターネットの発達で、現代では、いろいろな研究成果を簡単に検索することができるようになった。教育の分野でも同様である。
 ただ私たちが取り組むべきは、それらの研究結果から分かったことをどう取り込んで、子供たちをよりよい方向へ最大限の効果で導くことができるかである。
 教育に対する研究が進み、新たな知見が増えれば増えるほど、取り組むべきプロセスの課題が増えていく。だが、それはよりよい成果を生み出すための進化の可能性に他ならない。

 一歩一歩の遅々とした前進かもしれないが、スタッフの力を結集して、着実に前進する覚悟である。

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