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離れていても

コロナが世界規模で猛威を振るうようになってから、もう少しで1年が経とうとしています。あっという間の1年間でしたが、連日のように「感染者が過去最高を更新」というニュースが流れ、猛威はとどまることを知りません。

幸い、私たち誉田進学塾は、緊急事態宣言が明けてからは、時間を変えながらも授業を続けることができています。一方で、この世界的な不況を直に食らっている職種もあります。
先日、民宿を営んでいるオーナーにお話を聞く機会があったので、ご紹介します。その民宿は、私が大学生の時に部活で毎年夏にお世話になっていたところです。

「緊急事態宣言があってから、泊まりに来る客が来なくなった、というより、営業できませんでした。お互いリスクのこともあるし、営業していても人が来なければ意味がないので…。」

「もう民宿を畳もうかと思っていたんです。でも、夏に1校、毎年利用してくれる部活の合宿団体が、『どうしても宿に泊まらせてください。消毒は全部自分たちでやりますから。お食事だけ作ってくだされば、後は全部自分たちでやります』とお願いがあったんです。そういわれては…と、熱意に負けて受け入れることにしました。」

「合宿に来てくれた時は、いつもの活気が戻ったようでうれしかったなぁ…。私たちはもう年だし、店を畳む時期なのかもね、と話していたけれど、娘が『後を継ぐから』と言ってくれて、それならば私たちも…!と思い、現在は身近な人たちから宿泊や食事を受け入れるようになりました。」

店を畳もうと思った、と言われたときは、本当に心が痛みました。いつかは引退するときは来れど、満を持しての引退ではないことに悔しさがあったはずです。
しかし同時に、「人のつながりと温かみ」が本当に感じられる話でもありました。オーナーの人柄が、合宿団体の人たちの心をつかみ、「どうしても使わせてください」という、民宿に対する恩返しの行動として現れたこと、周りの支えがあって、もう一度民宿を経営できるようにまで復活できたこと。どれも1人ではできないことばかりです。

最近では、「ソーシャルディスタンス」「外出自粛」「今は離れていよう」など、人との距離が遠いように感じてしまう雰囲気ですが、離れていても、人と人とはつながっているんだなとしみじみ感じることができた、貴重なお話でした。

私たちは今は家にいること、感染しない・させないことを徹底することしかできないけれど、このような悩みを持つ人もいるのだということを発信し、知ることが、「解決につながるきっかけ」を生み出すヒントになるのかもしれませんね。

(教務 中島)