口を開けば、「先生、わからない、できない、嫌い」。そう言いながら質問に来る生徒がいました。中3のNさんです。そんなとき、わたしたちはなるべく答を教えないことにしています。「何がわからないのかなぁ」「なるほど、それかぁ」「じゃあ、どう考えればいいのかなぁ」ヒントを出しつつ一緒になって考えます。最後の「なるほど、そうか！」の一瞬を本人自身に体験してもらうのが大事だからです。

　そのNさん、入試が近づくにつれ、言わなくなりました、「わからない、できない、嫌い」と。本人いわく「前は何も考えなかったけど、今はまず考えてみる。何がわからないかわかるようになってきた」「私、すごく勉強している。わかるまで粘っている。すごいでしょ！」。他の先生も、「Nさんは成長したよね。質問が本格的になってきた」と感心するようになりました。

　【わかるように考えてみる】【わかるまで粘る】のは当たり前のことでしょう。その当たり前のことを実行できるようになったNさん。これからも壁にあたることはあるでしょう。でも、努力の大切さを身を持って経験したあなたなら、逃げずに、その壁にぶち当たって、そこから自分自身を成長させてくれると思います。応援してるよ、Nさん！

2012年5月